連句表紙頁

自己解釈

評者 涛青

世は節分。一座四人は、旅興行に出た。行く先はといえば、遠く都を離れ、平家の落人が棲むという、山深き湯の里。
徹夜も辞さぬ、一巻成就の意気込みものすごく、列車が動くやいなや麦酒をプシュー、カップ酒グビリ。列車乗り継ぎ、タクシーの運転手から地元情報たっぷり仕込み、着いた湯西川は雪の中。
寒さに震え駆け込むそば屋で熱燗またグビリ。そこから半里ばかりなる今宵の宿は名前もゆかしき「平の高房」。温泉に浸かるとたんに酔い戻り、崩れる如くに熟睡。
さてと、とりかかりしが、夕餉の酒で、またうとうとと。
で、表六句のみの旅興行と成り果てた。

1,えらく雪が降りますね。雪に埋まってしまいそうな今日の宿は、雪明かりでほのかに見え、ほっとしました。
思えば遠くへ来たもんだ。
翌日は立春だが、これだけ雪に囲まれ零下10度の寒さともなれば、とても春の句は思いつかず、冬の立句となってしまった。

2,お待ちしているうちにつららがあんなに長くなってしまいました。山奥の地を訪れたのをからかって、おや、お供の熊さんと鹿さんはいらっしゃらないのですか?
ユーモラスな句で主客を迎える付け句で秀。
翌日、朝食の席で、熊本さんと鹿野さんご一家が同宿していたのにはまっことビックリしましたな。

3,熊も鹿も出るような落人の隠れ住んだ里で、彼らは仮の住まいと思っていたのだろうか。
実際は、この巻の行く末が思いやられますなー。眠いので、枕に顔をうずめて隠れてしまいたい。
不易さん睡魔に襲われリタイア。

4,仮の住まいはいずこ。鰯雲が浮かぶ先に舳先を向けて船は行く。
一転して海の上に。場面の転換が酔い、間違え、良い。帆影で月を呼び出す気配への気配りも秀。

5,月が皓々と冴えているが、熊笹の葉が重なり、うろこのようにまだら模様に光を落としている。
鰯雲に鱗を付けた言葉付けとなっている。

6,山里の狭苦しい世間ではとかく人付き合いは煩わしいもの。熊笹に月が差す夜道を、新酒を携えて本家へと御機嫌伺い。
どうも平家の怨霊に取り憑かれたのか、皆山里からなかなか離れられない。

7,苦吟の旅、大変お疲れさまでした。句作りに苦しむはずが?道中珍事だらけ、笑いの
絶えない大変愉快な旅となりました。
不易さまにはお手配等、大変なご苦労をおかけしてしまいまして心より感謝を申し上
げます。涛青さま、影左さまにも道中お気遣いを多々いただきまして、誠にありがと
うございました。

数多くの珍事がありましたが、私の中のナンバーワン!はなんと言っても、あの奇妙な謎のおばあですね!旅の後もあれこれと思いをめぐらせて、いろいろ想像してはひとり笑いしている自分が恐ろしい...。夢にでも出てもらい正体を教えてほしいのですが、きっと忘れた頃に突如現れたりするのでしょうね。あれぞ正しく平家落人の末裔かも?
涛青宗匠さま、「雪積む宿の巻」、厳しいご指導をどうぞよろしくお願い申し上げます。皆さまの快調な滑り出しに早くも足を引っ張るような事になり、申し訳ございません。
それでは七句、まいります。

やかましか!いつものことながら本家の自慢話にはうんざり。それでも、分家の身の辛さ。極上の新酒を捧げても、御馳走が目の前に並べられても箸も出せず、口も出せず。
どうも、ここでもまたあの奇妙なおばあにとり憑かれているようで。本家の主はあのおばあのような気がしてしまいました。はたして、お通しいただけますかどうか。
山穂
七句 結構でございます。
げに恐ろしきものは閉ざされた山間の地の人間模様。
八つ墓村にならなければいいが。
お次は、不易さんの出番でございます。お目覚めになられましたか。

8,皆々さま 過日はお疲れさまでした。
湯の宿でじっくり句作に打ち込めると思いの他、道中、長すぎたようで、湯疲れ、呑み疲れ、雪酔いでほうほうの体。渡り廊下のガラスに映った洗髪後の己が姿に、すは落ち武者かと肝を冷やし、はたまた影左さまのご入浴時には、うつ伏せの童が湯に浮かんでいるなど、どうもお場所のイメージが災いいたしたようです。ともあれ、初の地方興行、反省点も多々ございましたが、とても楽しい二日間を過ごすことができました。あらためて皆様に御礼申し上げます。新たな巻、濤宗匠さまにはご面倒をおかけしますが、引き続き由なにご差配の程、お願い申し上げます。
ふと降り立った海辺の町。たった一軒ある駅前食堂に立ち寄る。他所の者が珍しいのか、食堂の親父の土地自慢、肴自慢がはじまって閉口する。まぁこれも旅の楽しみのひとつではある。
八句いただきます。ありそうな情景ですな。やはりお酒を飲みますか。こころ食堂のおばちゃん元気にしてるだろうな。かき入れ時だもん。

9,磯の香漂う海辺の町へ降り立った男。何十年ぶりの故郷だがすっかり寂れ果ててしまった。卒業した小学校も廃校となってしまった。校庭のあった土手に咲く曼珠沙華が、並んで赤い帽子を被った児童たちのように見えてしまう。
花前ではないので、他の花を出しても差し支えなかろうかと。お次は、花前です。影左さまよろしくお願いします。

10,皆々さま雪の湯西川旅行お疲れさまでございました。野天ぶろは、ややぬる燗の感じで熱湯が好きな身にとりましては、もちっと熱さの湯に浸ってみたかった気分です。しかし、体には良く効き、帰ってからも温泉効果が一日もってくれました。 全て,段取りを仕切って頂いた不易さまに感謝致します。
廃校となった校庭を眺め母校に想いをはせる。当時あんなに広くみえた母校の校庭もこのくらい狭く小さかったのか。感慨に耽っていると首筋を吹き抜ける春風がさらに呼び起こすのは、あの頃、よく黒板消しにたまったチョークの粉を窓辺で叩いた日直の思い出か。
陽のあたる窓辺で、カミナリ先生への憂さばらしに力を込めて叩くと春風がチョーックの粉を校庭の彼方まで吹き飛ばしてくれたものでした。
お早い付けで恐縮です。
花前結構です。欲をいえばもう少し学校から離れてほしいところでしたが。

ポカやってしまいました。九句の彼岸から彼岸花=曼珠沙華としましたが、秋の彼岸に咲く花ですね。平家のたたりでしょうか。
したがいまして、訂正させていただきます。十句には差し障りがありませんのでそのまま続けさせていただきます。
では、花の定座です。不易さまよろしくお願いします。

11,宗匠さま 花です。よろしくお願い致します。ほのぼのと、たゆとうとした花前の句。ありがとう存じます。
風に乗って里にも春の訪れを知らせる佐保姫の露払い。南の山のむこうから、桜の開花をしらせるうれしい便り。いかがでせうか。 易低頭
花いただきます。春風にのってひらひら舞うのは花びらに変わりました。佐保姫は佐保山のことで、奈良の都の東方、春は東にありとされていたので、春の象徴とされた。佐保路を歩く人はいまも絶えない。
では、お次は山穂姫の出番です。

12,お待たせいたしました。十二句目、いかがでしょうか。宗匠さま、ご指導をよろしくお願い申し上げます。
遠く離れた異国の地で故郷の花の便りが届いた。今はまだ辛い修業の身だが、いつかは祖国の美しい花を思わせるような神秘の絨毯を作るのだと夢を膨らませている。佐保姫・山穂姫・織姫と続きます。(すみません、冗談です。ご勘弁ください。)
私事で申し訳ございません。自衛隊の友人が先週土曜日にイラク・サマワへ出発しました。湯西川の帰路途中入った携帯メールは、「今からイラクへ出発します」というものでした。メールに気づいたのは翌日でしたので、激励の返事は間に合わずしまったなー、と。花を待てずに出発した友人に花の便りは届けられるのか、また、厳しい環境の異国の地で「花、今、咲いた。」と知るのはどんなかなと、思っていたところでした。
不易さま、せっかくお知らせいただきましたのに、一日外出しておりまして「いい旅夢気分」見逃してしまいました。残念!どなたかご覧になられましたか?もしかして、おばあの正体はわかりましたか?山穂
十二句いただきました。どうしたのかしら?九日には届いておらなんだようで。迷惑メールと一緒に削除されたのかも。失礼しました。平家の祟りかもしれませんな。
遠くペルシアに飛びました。初折りの折端で大きく転じて名残の躍動を期待させます。誠に結構です。では、折立を影左さまよろしくお願いします。

13,やはり、湯西川の旅帰りは、さまざまに尾を引いてるのでしょうか?手前の場合は、酒酔いの日々が尾を引いている模様ですが。
夢の絨毯を織りなす異境に降り立ってみれば、ペルシャ王朝の光芒や文明の交流の歴史がつまった栄華の面影に取り囲まれ、旅人は何千年も前の時代に迷い込む。 豪華な絨毯やきらびやかな宝石が飾っていた王宮の生活。その宝石もあの王妃の胸を飾っていたかと思えばこちらの姫君の指や腕に魅力を与え引き立てていた。 繁栄を誇った王朝も次々と変わって、彗星の輝きのごとくに歴史の彼方に飛び去ってしまう運命の中で姫君の涙が、あの猫目石のように美しく輝いてみえるのはやはりペルシャだから。
影左   拝
ペルシャ→ペルシャねこ、の発想でござりましょうや。ちょっと単純ではありますが、よろしいでしょう。雑句の後の長句では、なるべく季語を用いましょう。短句で季語を入れるのは骨の場合がありますので。では、十四句まいります。

14,どろぼうではありません。古来、彗星は禍々しきことの現れと恐れられていました。頭の上に火の粉がかからないように、雨も降らずに傘をさしたり暑いのに頬被りしたものです。では、お次は山穂姫でございます。月の座が控えておりますので、それなりに。

15,オリンピンックが開幕しましたね。開会式はさすがイタリア!という演出で近年では一番良かったのではないでしょうか。毎日楽しみなのですが、日本勢のメダルはなかなか難しそうですね。今夜の男子スピードスケート500&女子ハーフパイプに期待したいですね。それでは十五句まいります。夏をもう一句続けました。いかがでしょうか。
先人の話。昔、蔵の底が抜けるほどの商家で、虫干し時に金子も干してると言う噂の家があったそうです。火の粉が被らないように、災いに遭わないように大事に干さなくっちゃ。本を干しているのではありません。得意気になって金子を見せびらかしているのです。実はあの頬被りはどろぼうで、その隠し金だったりして。宗匠さま、どうぞよろしくお願い申し上げます。
お早い十五句いただきます。やはり大泥棒でしたか。結構です。曝書よりは曝涼のほうがいろいろの蔵品ということでよかったのでしょうが、涼の字がさわりになりますから仕方がありません。では、不易さま、月前です。よろしく願います。

16,宗匠さま またまたの文字の重なり、度重なる不手際、申し訳ありませぬ。お手数をおかけ致しまする。
余りの暑さに、涼を求めて井の中に黄金をさらし、底から吹く冷気を受けて一興となす澄まし顔。「日に曝す」を「水に晒す」に。「澄まし顔」を「水の濁りをとる」澄ましに転換。かつて加藤清正が名古屋城築城のおり、大井戸の濁りを除くために黄金を沈めたと云います。名古屋城の説明版では慶長判としていますが、濁りを摂るのであれば、ここはやはり砂金であろうと思われます。仄暗い井の底に、曜変の如き耀きが見える様は、なんとも埋蔵金好みにはたまりません。易拝
十六句いただきましょう。彗星がありますが。ご苦労なされたようですね。解説は不易さまの加藤清正伝に譲ります。そんな伝聞を名古屋城の天守の地下で見ましたが、黄金は絶対遺ってないだろうなと思った。月の前の星では、月は出しにくいです。

17,井戸から出るのはお菊さんと相場は決まってますが、朧に見えるものとして。恋しい人の俤なれど、今日の十三夜の月のように薄れていってしまうものなんですね。薄情者め。
では、折端は、影左さまです。秋を三句続けましょう。

18,年明け初の雪の温泉に浸かった時の湯加減か、菊水の酔心地が身体に滲み渡ったままで、十八句続けます。
十五夜と十三夜の月は、秋の夜空の双子のようにどちらもその美しさを讃えられている。 もちろん双子は似ているものですが、庭の棚から大きく育って吊る下がっている糸瓜の下に双子の孫を並べて写真を撮ると、親の俤をそっくりうつして可愛く育った表情のふたりの孫、少しずつは違うがそのそっくりさを見るにつけても、この可愛さはふたつの月のよう。  
遺伝子のうつし効果の不思議は、人の心を繋いでゆきます。
十八句お早い付けで恐縮です。いただきます。
糸瓜の下の双子は瓜実顔なんでしょうねおそらく。
では、いよいよ名残の裏に入ります。
先の宗匠不易殿よろしくお願いします。秋もう一句。

19,闘蟋では糸瓜とは違うが瓢箪を虫籠に用いるものもあることからの思い付け。瓜をふたつに割ると左右が対象となり、どちらもそっくりになる事から瓜ふたつ。双子が瓜二つなのは当たり前、ここでは「似ており」としているので、糸瓜の様が双子のようだとしているか、影左さまの解説のとうり、双子の様子がその子の親によく似ていると受け取るかの思案。そこで、糸瓜の棚の下で虫籠を覗き込みながら仲良く遊ぶ、同い年のふたりの子供がまるで双子のようによく似ていると解釈して付けてみました。もっともてて親は同じですが。
十九句いただきます。秋の季語に引かれたきらいがほの見えます。
姉妹と双子と並ぶところに近しいところがありますが、よろしいでしょう。
では、廿句目山穂さまの出番です。本命の花の座を見据えてどうぞ。

20.皆さまお変わりございませんか。ようやくここ数日、春の陽射しがやわらかさを帯びてきましたね。花の季節も間もなく、嬉しさがわいてきます。本命の花に向けて気持ちを込めて、で、こんなになってしまいました。
私はこの巻、雑が多かったのでここで冬を一句付けさせていただきました。宗匠さま、いかがでしょうか。
可愛かった娘時代は遥か彼方。今では初々しい嫁の粗探しを、日々楽しみにする姑の王道を歩んでいる。愛らしく寄せ逢った額には皺が刻まれ、いつも眉をひそめてひとこと言わずにいられない。忙しい年の暮れにご苦労なことです。
オリンピックもはや終盤へとさしかかってまいりましたが、ノーメダルの可能性も出てきた日本ではしらけムードが漂ってきているようで す。女の子の尻ばかり追いかけるようなマスコミを含めて日本のスポーツへの 考えを改めるよい機会ではなかろうかと、かえって良いことではないか思って おります。
さて、廿句ですが、滑稽味がありかつ渋く、なかなかの秀句でございまする。情景が目に浮かびます。季節の移ろいも秋から冬と順に行き、春を迎える心配りも心憎いです。では、廿一句、花前前になります。ここは冬を受けて春にしていただきたいところですね。影左さまよろしくお願いします。最終は四句春でかまいません。

21, 寒暖の差が殊更に激しい冬ですが、皆さま体調の方はいかがでしょう?当方は、また金沢出張で留守を致しまて皆さまにご迷惑をかけてしまっていますが、今年前半の大雪情報にやや危機感を抱いて向かいました雪国にしては、金沢市内の雪がすっかり消えておりまして、幸いにも、雪に閉ざされることなしに東京に戻れました。それでは,春の句を、
美味しさについ舌打ちがでるお節。日本のご馳走は季節感豊かに食卓に登場し、家族や人々の輪をなごませてくれます。北陸の宿に泊まっていると、どこから手に入れて来たか菜の花をおなじみの客が自慢げに宿の女将に「ほら、こんなにキレイな菜の花」と渡した翌朝、朝食のテーブルには、菜の花の酢みそ和えの小皿が一つ増えて添えてありました。 
客も女将も「キレイな緑色ですね」「雪国の春を呼ぶ色」と会話が弾む北陸路の朝です。
北陸ももう春の身支度のようですね。深い雪に難渋したところもほっとしているところでしょう。廿一句は綺麗な春の句をいただきました。北国を持ってきたのは待ち遠しさを強調してよろしいでね。じんわり春の喜びが伝わります。

22,じんわりのあとはのんびりです。カモちゃんかも知れませんが。
では、匂いの花です。満を持して山穂さまどーぞ。
挙句は不易さまご準備はよろしいでしょうか。

23,穏やかな春の訪れと人々の平和を心から願って、花の句、まいります。宗匠さま、よろしくお願い申し上げます。
海にも山にも、空を見ても地を見ても美しい花が溢れている。どの道を行っても花に囲まれ人々はやさしい顔。どの道を行っても花の道が続くこの国に生まれたことを感謝したい。
花の句いただきました。
世の中春が充満している喜びに満ちた大らかな句作りで匂いの花にふさわしい ものです。
我が世の春と見れなくもないが、人皆喜ぶ、明るい春とみたほうがよいでしょう。

初出の、 行く道は空も地もみな花盛り を改作

24、挙句です。いかがでしょう。
冬の間は眠ったような山も、雪が解け小さな草々が芽吹いてくると、まるで伸びをして起きあがってくるよう。
挙句結構でした。
むっくりむくむく春の力ですね。
雪深き山間の平氏の落人集落からはじまり、春を迎える春寒の雨に終焉を迎えました。
平氏の怨念に彩られた一巻もめでたく巻き終わりました。
拙き進行役にもかかわらず皆さまの技量の深まりでするすると進みましたこと 誠に歓喜に絶えません。
皆さまお疲れ様でした。
しばしの休憩を挟みまして、再出発を期したいと思います。