連句表紙頁

自己解釈

評者 山穂
後見 涛青

1,たわわに咲ける枝垂れ桜の様を観ている時は、さながらいい湯に浸かっているようです。
先達て福島の桜の一木、23樹を採集してまいりました(走行距離990キロ)。今年はいつになく開花がはやく、ほとんどは九分散り状態でしたが、おかげで葉も花も同時に手中に収めることができました。2泊3日の桜旅、なかなかのものでしたぞ。

評 伸びやかで、溢れるほどの桜の花を想像させる技法には、さすがと、感服致しました。
後見:発句は当季を詠むが常道なれど、陸奥の遅き桜に感銘が深かったのでしょうから、ここはよしとしましょう。

2,まーよござんしたね、そんなに桜をいっぱい見れて、もう十分でしょう。何も無いけれど、たっぷりと満腹の客人にはかえって庭先に生えていた韮のおしたしなんかがいいんではなかったでしょうかね。

評 涛青様、早速有り難うございました。脇の句・亭主の挨拶の基本とも言うべきでしょうか。また、ユーモア溢れさすがです。
では、第三句目を続けて参ります

3,おしたしばかり食べるようになった歳ではないが・・・。長閑な昼下がり、ヘミングウェイの世界へ空想の旅でもしてみようか。随分昔に読みかけで放りっぱなしだった本でも枕にして。

4、どこかで聞いたような...私の大好きな「走り走りて」から頂きました。
「古本を枕にすっかりうたた寝。夢の中で、芭蕉に連れられて陸奥の旅へ。春に旅立ち、いつの間にやらすっかり秋。色とりどりの紅葉が美しい...。雪が降る前には江戸に帰りたいが...」

5、風がやんで静寂、空には皎々とした月、奥の細道をふと思い浮かべると、同行者曽良もこうした月を詠みたかったのではと哀れに思える。3句目の古本が打越気味でひっかかるが前句が折角の呼び出しなので芭蕉翁に敬意を表して。
涛青さま、結構でございます。曽良を登場させる見事な演出、恐れ入りました。
海市さま、四句では大変失礼を致しました。力過ぎて申し訳ありません。
それでは、不易さま、続けて六句目をお願い致します。

6、凪いだ夕暮れ。床に活けようと庭に降りて、東の真垣に咲く見頃になった菊を摘む。身を屈めて花を手折ると、ふと視界にはいる夕月。
いかがでせうか。故事、本説等は表六句では嫌われるのですが、これだけ色々と出てしまえば、ダメおしでもう一句。陶淵明の詩からの本歌取りにてご無礼致します。なほ、「離」は「まがき」のことで、竹冠がつきます。字が検出できずに「離」で入力しましたので、ご訂正くだされ。
質疑応答
--後学のために教えてください。菊を垣根の植栽に使うモノなんでしょうか。冬はどうなっているんでしょうかね。見た記憶はないんですが。
--お尋ねの垣根の件ですが、「籬」は竹・柴を粗く組んだ垣で、垣根全般を指すものではありません。東に面した籬の傍に咲いている菊を採ったという意味で詠んでみました。
陶氏の詩では、「東籬下菊摘、悠然望南山」とありますが、これは「東の籬の下に菊を摘れば、悠然として南山の見ゆ」と読むのでしょう。「籬の(下)」を省略した迂生めの舌たらず、生半可な本歌取りにて、いらぬご不快を感じさせましたことお詫びいたします。故事、本説はもう少し腕前をあげてからにいたしますれば、今回は何卒、ご容赦。「の」ではなく「東籬に」としたことでお許しあれ。
不易さま、結構でございます。とても素敵な情景を描いて頂きました。「不易ワール
ド」はまたひとつ、勉強させていただきました。仰るとおり、「籬」に訂正いたしま
した。それでは海市さま、続けて七句をお願い致します。初折の裏入りです。転調してくださいませ。

7、「15の春に故郷を後に都会の学校に行ってしまった友が、5年ぶりに帰って来た。今日は再会の日、不安と期待で夕食会の支度をしていても、落ち着かない...」
なかなかイメージが出てこなくて...
いかがでしょうか。
初折の裏で春が出てしまったので、これはこれでしかたがないので花の座を移しましょう。
9句目に花、8句目を花前にする変則ですね。発句の人に花を持たせるのだから文句は出まい。花前で誘うは宗匠。

8、久しぶりに帰って来る子供を待つ父親。嬉しさに心は落ち着かず、接ぎ木職人は実は
仕事も手につかないが、口笛を吹いて喜びを誤魔化している。

9、定家が自宅の庭に接ぎ木しようと、内裏の枝垂れを折って見咎められた話はつとに名高いエピソードです。そこで、前句を受けて、王朝風にエピソード2。

10、しみじみと酒を飲んでいると我が家自慢の桜を思い出した。そこへ突風が...。嵐が近づいているのか、急にあの桜の木が心配になる。

11、花も嵐も・・・と来れば、次は女の一生でしょうか。
身が引き締まる思いでいつも暖簾をくぐる。その先には伝統を守り続ける堅い女将の
立ち姿がある。

12、「帰り難くなりそのままズルズルと、昼も過ぎ、する事もなく、爪を切る男」
前句のキーワードは、端整な女性の匂い、でしょう。恋の呼び出しですね。これは受 けなければ男が廃る。
退廃の匂いが漂う佐田啓二主演の映画のようで秀逸。イツヅケテ、ゴゴ、という語調 が、宇多田ひかる調のテンポで軽快、暗さが払拭されている。(いいことづくめ)
歌仙では初折には恋はあまり出さないといわれているが、短い我が新都玖波ではそん なこと言ってられない。恋は急げである。

13、前句の人物、降りこめられた旅の途次か。冬ごもりの村に帰郷したえんだら息子か。
この辺で、冬の景色もとおもいまして。易拝
不易さま、季移りのお気遣いを有り難うございました。結構でございます。とても美
しい雪夜の情景が表現されていて宜しいかと思います。
それでは涛青さま、十四句・月の呼び出しをお願い致します。海市さまはお次です。
月の句をご準備くださいませ。

14、冬になると雪にすっぽり埋まる村は疲弊しておる。秋祭りもできるかどうか。世話役
が資金集めに村を回るが、はてさて気が重い。
涛青さま、早速に有り難うございました。前句の静寂感に対して躍動感で展開し、物語が面白く宜しいかと思います。
それでは海市さま、お待たせ致しました。月の定座でございます。
皆さま、後半戦に入りました。一気に加速して参りたいと思います。

15、「秋の収穫も充分とは言えなかったが、来年にかける期待と今年の労働に感謝して、
祭りは盛大。村の皆も満面の笑みで溢れ、満ち足りた気持ちで一杯であった。」
海市さま、せっかくお送り頂きましたのに携帯通信が途中で途絶えてしまい、大変申し訳ありませんでした。月の句、結構でございます。語調がとてもリズミカルでよろしいかと思います。それでは続けて参ります。

16、大仕事を終えた満足感と喜びは何処へやら。秋の夜長を持て余し、収穫した子芋をつつきながら箸先は溜め息まじり

17、思い通りにいかないのは小芋だけではござらん。この暑さはどうにかならんかや。イライラして、なににあたったらいいものやら。
それにつけても暑い、暑い。実感でござる。
涛青さま、ご丁寧にご挨拶頂きまして恐縮でございます。早速の付け句を有り難うございました。涛青さまお得意の独特でユニークな展開は、巻にひと味違ったスパイスが加わるようですね。
それでは不易さま、大変長らくお待たせ致しました。十八句をお願い致します。

18、暑い最中の訪問先、遠路はるばるご苦労さまと差し出された主の心づくしの扇と麦茶。
汗を拭って一息いれようと、拡げた扇の絵柄は厄払いの鬼の大津絵。何も、こんな暑苦しい絵をえがかなくともよさそうなものを。と、人の好意まで癇にさわっ てしまう今年の暑さ。
宗匠さま、よしなに。早く一巻満了して「盛大なる暑気払い」とゆきたいものです。はい。

不易さま、早速に恐れ入ります。またまた不思議な世界を描き出して頂いて面白い展
開になりました。仰るとおり、早く完結させて美酒を味わう一席を設けましょう。そ
れではファイナル目指して一気に参ります。海市さま、十九句を宜しくお願い致しま
す。

19、扇の鬼の絵を見ていたら、何やら懐かしさで胸がいっぱいに...。妻を思いだした
のだ。その顔は、怒っているときの妻の顔にそっくり。「いい加減にダラダラした無意味な旅は早く切り上げて帰ってらっしゃい。」と言っているようだ。住み慣れた我が家も懐かしい...と里心が。

海市さま結構でございます。語調も良く、柔らかな語句の中で一気に現実へ引き戻される情景が面白い展開となりました。

20、怖い古女房にもはにかむ乙女の頃があった。頬が赤らむ可愛らしさと「揺れる」躍動感で若い娘の象徴を表現しました(現代はいるでしょうか、こんな初々しい女の子)。
皆さま、残りわずかとなりました。有終の美を飾ってください。涛青さま、二十一句
をお願い致します。

21、振り捨てて都に上った、あのほっぺの赤いお下げの娘が、妙に懐かしく憶えて、ふる里に帰ってみれば、やることはなく、得意だった歴史に首を突っ込んで、人とぶつかり、変人扱いされる。
花前を前に、こういう句を作るのも、偏狭な心が芽生えてきたからなのだろうか?
つぎの人はたいへんだろうなー。 

涛青さま、最後まで意表をつかれてしまいました。涛青さまならではのユモアに富んだ秀句の数々、恐れ入りました。
それではいよいよファイナル、不易さま花前を宜しくお願い致します。海市さま、挙句をご準備ください。

22、春の愁いにひとり登る丘。天空高く囀る雲雀に己が孤高を重ねる。
不易さま、早速に素晴らしい花の呼び出し恐れ入ります。何とも幻想的な愁いさが表現された秀句でございます。特に「空に吸われし」は強く心に響きます。この後は大変緊張致しますですが、続けさせて頂きます。

23、さて、旅に出るとしよう。丘の上から遙かに見えた美しい花の群れとゆったりと流れる季節を友にして・・・。
匂いの花の句は尊敬する神様(芭蕉爺)の境地へ少々。恐れ多い事とは存じますが、有り難く頂きました宗匠の大役記念としてお許しください

それでは泣いても笑っても残り一句、海市さま、挙句です。淡々と、かつ喜び溢れる句をお願い致します。

24、いつも花の頃には、しなやかに軽やかに過ごして行きたいと思うのであるが...
二の句のつげない挙句になってしまったのでは...。よろしくご指導お願いいたします。

海市さま、早速に有り難うございました。結構でございます。新たなる巻への期待溢れる句として頂戴致します。
これにて「たっぷり湯の巻」完了でございます。皆さま大変お疲れさまでございました。途中、中断をしてしまった失礼をお詫び申し上げます。未熟者の私に宗匠という大役を与えて頂き、皆さまの温かく心強いご支援のもと、なんとか一巻を完了するに至りました。心より感謝と御礼を申し上げます。貴重な経験を生かして今後も勉強に励んで参りたいと思います。(完)