連句表紙頁

自己解釈

評者 涛青

1、新年二巻めのスタートは、滑り出しよくと思いましたが、発句の心得が不十分なままに、迷いの一日がすぎました。
ここは、気持ちを故郷方面にもどしまして駿河湾あたりから出直そうと思います。
シーズンともなると蒲原あたりの浜辺には、駿河湾の名産の桜えびの天日干しが赤い絨毯をなします。海からの恵みの小さな生物が、浜にびっしりと並べられ、天を仰いで見上げる方向には天下の富士山。
腰を曲げた桜えびの一尾一尾が、みんな富士山を見上げているように思える楽しい風物詩は、いかがでしょう。

影左  拝
滑稽味あふれるなんとも楽しい発句をいただきました。
春の風物詩を、生き生きした動きを伴う風景にして、大小の取り合わせの妙とあいまって、愉快な爽快さを表出した秀句ですね。
これに付けるのはちょと大変。
しばしご猶予を。

2、結構な発句を受けまして、
桜エビもいいけど、鯛の方がもーといいかもしれませんよ。こっちには白帆が 集まってきてますよ。
発句との掛け合いですな。脇句は、発句と同季、同所が良いとされていますの で、駿河湾ですね。きっと。
発句の桜の文字は正花とは認められませんので、花の座には正花を詠んで下さい。
三句目 相伴は不易さんです。よろしく。

3、鯛網は瀬戸内の縛(しばり)網が有名ですね。中でも鞆(とも)の浦の勇壮な鯛漁はつとに名高こうございますが、次ぐとなると何ともうまくつながりません。
前二句、海老、鯛、冨士、寶船とおめでたくも優美で雄大な浜の情景に暫しみとれておりました。
三句は転句。が、どうしても海の様子に引かれ過ぎて、前句を受けると打越ぎみのものしかできません。雑ならばおもしろく転ずることもなくは無いのですが、ここはどうしても春の季をいれませんと話になりません。
混乱しておりました。とりあえず前句は遠景と言うことで、余り意味をもたせずにしました。よろしくご差配のほどお願い致します。
さらりと受け流して結構だと思います。
どうやら、発句のインパクトに気負された気がありますね。私もそうでしたが。
では、4句目、山穂さんよろしく願います。
春三句つづきましたので、4句目季は変えてくださいね。
平句のはじめです。淡々と。

4、体調を崩して寝込んでしまい、お送りするのが大変遅くなりました。スタートからご迷惑をおかけしてしまい、本当に申し訳ございませんでした。お詫びを申し上げます。不易様、先日のお心遣い有り難うございました。感謝を申し上げます。それでは宗匠様、ご指導をよろしくお願いいたします。
切り通しの先の丘へと馬を走らせる。美しい街を見下ろし佇む姿はここへ帰って来たのか、それともこれから別れを告げるのか・・・。いかがでしょうか。
御加減が悪いところ催促など申して済みませんでした。もうよろしいのでしょうか?また、通信の不手際でご迷惑をおかけいたしました。
四句目、目先が変わって誠に結構だと思います。湯島の切り通しだと、湯島天神のあたりが町を見下ろす高台になりますね。暴れん坊将軍のような勇ましさも浮かんできますが・・・
お次は、影左さま、月の定座です。秋の句が三句続きます。よしなに願います。

5、連句をするは、何事にも連なることに意義があるのでしょうか、暮れから年明けの宗匠さま、2月初旬の不易さま、今度の山穂さまと体調不良のニュースが続きました。ここは轡をそろえねばと私も先日病院に行って参りました。もう、回復中です。皆さまの健康をお祈りいたします。
山穂さまの勇ましさあふれる四句に励まされて、五句目に参ります。
山々が紅葉がちに色染まる頃、山路を行き尾根の曲がりの先に突然、小さな滝が現れ驚かされます。辺りも朧に見える夕闇迫る山の端に月がさーっと顔を出すと暗がりから白い滝筋が月明かりにふわっと浮き上がって、動物の影かと思わせる幻想の時刻。
岩角に当たる滝の音も遠い鹿の音かと聞き違えたい気分に襲われたりする静寂の山間の秋を詠んでみました。
お早い付けで、痛み入ります。そうですか、今度は影左さんの番ですか。お大事に。
で、5句目いただきます。
月を詠み込んでいただきました。深山幽谷なれどやかましい滝の音。
馬の次は鹿となりましたか。

6、この度は私事で余計なご心配とご面倒をおかけしまして、大変申し訳ございませんでした。おかげさまで回復に向かっております。
影左さまはもうよろしいのでしょうか?皆さまもお身体にはくれぐれもお気をつけくださいますように。
それでは六句目、まいります。
深山幽谷の清らかな水で造られた銘酒。秋の夕刻の美しい光が差し込み、琥珀色のグラスを映し出す。ここではウィスキーを飲む人のイメージですが、いかがでしょうか。
追記
前四句では、ボーっとして、なお慌てておりまして、次句が月の句という事を全くわかっておらず、秋の句にできませんでした。影左様には素晴らしい月の句をつなげていただきまして、また、宗匠様にはお通しいただきまして感謝を申し上げます。
誠に結構です。夕影の語が新鮮な味を出していますね。
滝の轟音に静寂を対比して、牧水の
 白玉の歯にしみとほる秋の夜の酒はしずかに飲むべかりけり
の風情を感じます。
次から初折の裏入りです。
この裏では、恋の句を二句ほど所望いたします。
花の定座も控えています。
秋もうひとつ、不易さまよしなに。

7、影左さま、山穂さま、その後のご加減はいかがでしょうか。迂生も、珍しく風邪をこじらせてしまい、先週は一日だけ出社しただけで一週間寝込んでしまいました。腰は治ったのですが、とんだことでした。やっと回復いたしまして、今日からは平常どうり営業いたしております。引き続きご贔屓のほど、お願いいたしまする。さて、裏入りとのことですが、いかがでせうか。
おやおやよろしくないですね。風邪で貴重なお休みを消化してしまうなんて。お大事に。7句いただきます。新米に見習いと、反復して強調していますね。

8、新米さんの初の給料では、鼻緒ぐらいしか買えません。遠く離れた家に送るのは、赤い女物の鼻緒。妹にか、それとも、隣のみよちゃんにか。恋の呼び出しです。
山穂さんよろしく恋句に仕立てて下さいね。

9、今日はようやく春一番が吹きましたね。もう少しの辛抱で本格的な芽吹きの季節です。春の到来を楽しみに連句も更に頑張りたいと思います。不易様、お身体の具合はいかがですか?どうぞお大事になさってくださいませ。木の芽時は何かと体調を崩しやすいと言いますから、皆様、ご自愛の程、お過ごしくださいませ。
それでは九句目まいります。恋の呼び出し、合格となりますでしょうか。宗匠様、どうぞお手柔らかにお願いいたします。
赤い鼻緒を履いた若い娘も大人の女性になって色艶が出てきました。今日は待ち人来る日、お迎えする準備で忙しい。髪も整えなくては。
うーむ、恋の前段というところでしょうか。前句と一緒になっても、男の影が希薄なので、恋句と呼ぶにはもう一押し。恋離れの句とみれば良くできています。もし、前句が男女のことを詠んでいれば、寄り添えば恋句となりますし、次の句と付けば恋ではない、という句ですね。
では、恋の成就は次の影左さんに期待いたしましょう。九句目と合わさって恋の風情を出してください。花前ですので、通常は恋を慎むところですが、出かかったものが出ないのは、どうも落ち着かないので、この際です行っちゃいましょう。季節は春です。

10、気もそぞろに待ち人のために化粧に取りかかると庭木にやってきた頬白が枝の間から手鏡を覗き込む。
恋の成就?やって来たのは頬に白い化粧を施したロックミュージシャンKISSのような現代色男か、おややっぱり小鳥かいな。ああ、どちらでもいいから早く逢瀬の時や来れ、あらら、手鏡に紅がついてしまったじゃないか頬白さん!庭先から恋の行方をしかと見守って下さいね。
段々核心に近づいて来ました。
恋と春と、ましてや短句で大変だったと思います。
浮世絵の美人画を見るようです。しかし、浮世絵には、大方仕掛けがあって、部屋の隅の小道具、隣の部屋のかすかに見える蚊帳とか、前夜の出来事を暗示する情景が描かれているのです。いま一押しですね。じれったいなー。うーん。皆さんシャイなんだもの。
で、花なんですが、恋を入れ込んで見ました。

11、ちょっと狂句めいていますが、いきがかり上です、ご容赦。

12、祇園から四条へ、四月に入ると都踊のための篝火が焚かれます。花は散りかかる頃ですが、祇園界隈の春宵は一層華やいで見える時期です。散らされても歓びを感じているのは、今年が最後の都踊になる身請けの話がまとまった芸子さんかも。
結構です。お得意のご当地ものですね。
では、いよいよ2枚目、名残に入ります。

13、寒暖の行ったり来たりが激しい毎日ですが、きっぱりと暑い真夏の季節が恋しくもなります。日本らしい女性の華やかな衣装合わせから転じて、日本男児の社会へのデビューの図として甲冑を纏う出陣姿も凛々しい東北の夏があります。
相馬地方一帯が、七月の下旬夏の真っ盛りを時代色豊かに男のパワーを全開するい勇ましさ。甲冑の重みに耐える少年の土ぼこりだらけの汗が太陽のギラギラをはね返しています。
転じ方がダイナミックでよろしいですね。
春から離れて夏、順に行って、順調な運びです。いままで、月の座でいきなり秋を詠うケースが多かったので。
せっかく季節も順送りなので、月の定座までうまく運びたいものです。

14、立派に成長した日本男児は、大抵家では威張っておりますが、良く見れば丈足らずの浴衣から余り出る足、なんとも滑稽です。大きくなり過ぎた息子の姿か、新調してもらえないお父さんの悲哀な姿か・・・。温泉宿の浴衣姿や町中のスーツズボンの丈がつんつるてんという情景を時折目にします。滑稽さと悲哀が入り交じっていますね。
腕白少年が口を真一文字に偉そうにしているさまが浮かんできて微笑ましいですな。結構です。

15、一年を裸で暮らすモとは言うものの、近ごろはめっきり冷え込むようになってきた。気負って歩いてはいるが、脛の出た浴衣が傍目にも寒々しい。
秋を出していただきましたので、スムースにお月様にいけますね。では、秋を続けて、

16、武闘派一辺倒の相撲取りは、女のしきたりとなるととんとしらないものなんで す。八朔に手ぶらで行って、おちゃっぴいの禿に軽くたしなめられる場を想像したものです。恋の呼び出しと見てもよろしいかと(無視していただいても結構です)。
八朔は、旧暦八月一日のことで、贈答を行う日で、特に廓では、白の着物をお客が贈る習わしがあります。また、江戸城では、大名、旗本が白無垢で登城し、将軍に慶賀を述べる習わしが。家康の江戸城入りを記念した日。
秋も煮詰まってきましたので、月もでる頃合いです。山穂さん、よろしく願います。

17、想いだけは誰にも負けないはずなのに、恋しい人に何も贈ることができないもどかしさ。せめてあの美しい月を届けられるものならば、盗人にでもなるものを。
これは壮大な贈答品ですな。貰った方も置き場所に困ります。恋句としてもいいですね。メルヘンチックで。

18、恋に身を焦がして疲れ果てた体を山奥の秘湯で癒さんとしてしんしんと降る雪の中でひとり温泉に浸かっている。溶けては消ゆる雪の中、雪女が一緒に天からおりてきて、お邪魔しますと湯に入るのだが脚から溶けて消えてゆく。幻想か妄想か、恋の疲れは重症です。
雪女とは洒落てますね。まことに結構です。ハプニングを想像してみたくなるのは、やはり妄想でしょうか?

19、続けて裏入りは、旅人の孤愁です。

20、民話のような世界と水墨画のような深山幽谷の景の前句から何とか離れようとかくはあいなりました。深山には違いありませんが、こちらの野猿は映画などのジャングル・シーンには欠かせないあのお猿さんの効果音。
熱帯雨林へと話は飛びました。年間雨量ははんぱじゃないそうですね。雨の多いところはどうも私は苦手でして。

21、雨並びで失礼致しました。ギアナ高地の高みに漂う崇高な空気にまで届いていませんでした。さらに飛び上がってみます。
祭りは普通秋祭りですが、この場合は、特定せず、雑とみてよろしいでしょう。雷神も季節を問わず出現しますので。結構です。南米から日本の巷に場面は移りました。

22、祭りの後の流し雛。川を流れ流れ、行く先は天の川でしょうか。天を巡り、幸せをくれた雛がどうか再び幸せになるように祈る。
まことに結構な花前です。たゆたう春の景色に一抹の寂しさを込めて秀逸です。これで、匂いの花も格調高いものとなるでしょう。不易さま固唾をのんでお待ちいたしております。いよいよ大団円です。

23、まことに結構な前句を頂戴いたしまして感謝。何を付けても良く見える前句でありましょうほどに、おとなしくのんびりと次がさせていただきました。初折の花が落花でしたので、少しだけ散らせていただきました。固唾が喉につかえないよう早めにお送りいたしました。
肩すかしを食わされたようなゆるやかな句振りです。春風駘蕩の一場ですな。結構です。

24、これにて一巻成就しました。拙い差配にお付き合いいただきまして皆さまには感謝申し上げます。お疲れさまでした。