連句表紙頁

自己解釈

捌き 涛青


ちょっと間が空きましたが、気を取り直して、秋の風情を楽しみながらの出だ しといきましょう。
涛青めがこの巻の差配役を務めさせていただきます。
では、発句を山穂さまお願いいたします。

1,今巻もご指導宜しくお願い申し上げます。昨夜からパソコン通信不能で携帯からお送りします。
発句 野を行けば竜胆の青空の青 山穂
ご面倒かけまして申し訳ございません。
山穂さまからは早速の発句を頂戴いたしました。ありがとうございます。
けだし、PCが不調とかで携帯にて承りました。述べたきことがいろいろおありだったのでしょうが、言葉少なにせざるえなかったのはさぞかし無念かと推察いたしております。
清々しい風景が思い浮かびます。山路行けばなにやらゆかしき風情もあり、近景の青、遠景の青とが対照をなして気品漂う発句であります。
10月1日、の好き日の始まりは吉となりますでしょう。お隣の国への義理立てではありませんが。
脇句は即といきませんで、とりあえず、発句を言祝いで今日はご容赦願います。
遠く異国で走るお馬ちゃんで盛り上がっている様子なので、それをちょっと見てということもございます。
取り急ぎまして 青 拝

2,長雨せしまに、という秋の雨が続きます。
すだく虫の音も弱々しくなってきたようです。
では、発句に付けさせていただきます。
野を行く佳人(山穂さま)の方、そんなに龍胆と青空にみとれていると、風の戯れで紅い蹴出しが見えますよ。まあー、すらりとした白い御身足が・・・。
主客へのお追徴でございます。出だしで早くも恋の呼び出しともとれますが、主客がご婦人でもありますので、やむをえないでしょう。生々しくならないように、影左さまに鎮めてもらいましょう。
蹴出しは、腰巻きや足が露出しないために着る下着ですが、紅い蹴出しを着用するのは、祇園の方々とか花柳界の人に限られるでしょうね。艶めかしいものでしょうな。小生にはとんと縁がありません。
では、第三句は影左さまです。
秋の句に月が無いのは、素秋といって嫌います。影左さまの場合は幸い5句目の月の座を担当されてますので、第三句に月の座を引き上げて、5句目は月無しでお願いいたします。

3, 新巻発句から山穂さまの秋の風情に溢れる立ち上がり、宗匠さまのいつもながらの色気伴う諧謔の脇句と連なりましたので、三句目もすんなりとゆかなければいけませんが、秋の季節感をしっかり盛り込んで、月登場すべしとのご指南にいち早くお応えしなくてはとあせりつつ、、、急ぎ、参ります。
 やや平易に流れましたが、サラリーマン生活を三十数年続け、定年とはなれりの我が身を振り返りつつの第三句にございます。
 世のサラリーマン諸氏と同様、満ちたり欠けたりの生活をくり返したどり着いて見上げる月は、まっ二つに割れた半月。潔いまでの中弦の佇まいが、平凡な人間を見下ろしている。と、人生、秋口に差し掛かっての心境を反映いたしました。
 Podcastと、新しいものを耳にすれば、即精力的に取り組む宗匠さまの若さに圧倒されつつの自省をも込めました。
第三句相伴を疾くいただきましてありがとうございます。
初表からの艶めいた風情を鎮めていただきました。
満ちたる時の高揚、欠けて沈んだ苦節を思い、中庸の大切さに人生を見る清々 しさが、月に比定され奥深く感ぜられる秀句でございます。
前二句の体言留めをやわらげる三句目振りの常道も踏まえておられます。

月の座では、月の異名を使われていますので、どなたか、この表で、月並みの 月を詠んでいただけると、一巻が玄人ぽい手の込んだ仕上がりとなりまする。 蛇足=月並みの月とは一月、如月などMoonではない月
初三句するするとの滑り出し誠に結構でございます。
では、4句目不易さまよろしくお願いいたします。

4,左弦から満月を経て右弦へ、満ち欠けしては今宵で早十五日。梅雨だというのに一向に降らない空梅雨時。今宵も雲一つ無き煌々たる月夜晴れ。この分では当分雨は望めまい。しぶしぶ貴重な溜池の水を使う事にした老農夫。いかがでしょうか。
四句目、お早い付けで恐縮でございます。
結構でございます。頂戴いたします。
我田引水ではなく、困り果てての、貴重な水を使う図のようです。
農村の日々の風景に転化いたしました。
季移りもされています。
人物を意固地か責任感の主か、次句が付けやすい配慮がいきております。
では、次は、間が短いですが、影左さま再びお願いいたします。

5, 台風崩れの低気圧が、関東地方から北に向かって暴れ回ってこの収穫期に日本の農家もさぞや大変な目にあっていることでしょう。
 お百姓さんあっての瑞穂の国は、いまや遠い昔話?輸入農業の時代、意地で農業を背負って生きている農家の頑張り、気概が第四句からつたわってきましたので、ここから農家生産の恵みを享受する消費者の生活風景が浮かんできました。五句目も、雑でまいります。
 スーパーのかごにみずみずしいくだものをたくさん入れているのは、新婚の奥さんでしょうか?いえいえ、きっと、近頃珍しい子だくさんの肝っ玉ママなんでしょう。農家が愛情込めて育てた果物をこんどは、自分が育てるこどもにたっぷり食べさせようといくつも詰め込んでいる母親の愛情が、かごのなかでゆれてます。
3連休を使っての5句目ご苦労様です。いただきます。
農業は大事です。
農業従事者から転化して、実りをいただく側の小市民的日常が描かれていて、 明るい家庭の根幹をなす食の大切さが説かれていて誠に結構です。
果物はやはり秋が充実しているような気がします。店先にはいろいろな果物が それぞれ色合いを競って目を楽しませています。
その中に、ひときわ異彩を放つ物体を、先日発見しました。
ふっくらとした形状で、淡い紫というか藤色の柔らかな、上質な日本画の顔料 を引いたような、いかにも大和調の静かな佇まいで、ひっそりと、しかし一度 目に入ったら吸引力抜群のものでした。
静やかで、たおやかな美女の風情を漂わせていたのは、アケビ、でした。
色の美しさに惹かれ、デジカメで撮ろうと買い求めてしまいました。すぐ撮影 すればよかったのですが、所用がありでかけて、翌日撮影という段になると、 なんと、このたおやかな美女は、たった一日にして色合いを深め、濃い紫に、 熟女に変身してしまったのです。どっしりとしてきてしまったのです。
もう、撮影する気にはなりませんでした。
移ろうものの儚さに涙する秋の日でした。

では、初折の表折端は、山穂さまです。よろしくお願いします。
できれば、月並みの月など入れていただけるとよろしいのですが。

6,六句です。ご面倒おかけしますが宜しくお願い致します。
欲張り女性の籠の中はいつも何かいっぱい詰まっています。あれこれ並べて悩ましい事。
第6句お早い付けで痛み入ります。
お出かけにはどれにしょうか迷う女心が綴られて動から静への変化が結構です。
表に月の文字が出て収まりもよくなりました。
季節は夏へと移りました。

7,単衣を並べてあれこれといった女性のようなことをいっさいせずここまで来たのに。齢もたそがれとなって、いらぬ気遣いをせねばならぬ。目立たず出過ぎずがモットーのサラリーマン一筋の人生にまたひとつ気の重いことが。
今様模様替え風俗のひとこまです。
夏がふたつ続きました。お次は影左さまよろしくお願いします。
春は花が控えてますのでまだ早いですね。

8, いよいよ秋の観光シーズンが訪れました。先週、所用のため高崎に向かって関越道路に入ったとたん、
熊谷まで2時間以上の渋滞案内の表示、周りには通常の5〜6倍かと見える若葉マークの車。さらに渋滞を加速。
連休を使っての行楽ラッシュの渦に飛び込んでしまいました。
 で、ラッシュと言えばこの数年、何かと言えば携帯電話を使ってのスナップ撮りのラッシュが大流行りです。早実の斎藤選手にも黄色い声と携帯ラッシュの波が押し寄せていました。
いつの時代も、流行の流れに乗りたがるのは、世の常なのでしょうか?
たそがれて周りがクールビスクールビスといえば、さて我も世渡りのためにどうにかせねば・・・、
振り返って我が家を見れば、晩婚、非婚時代に娘も流行に乗ってか片付く様子が見られなかったが、
やれやれ、ようやくか。
 寄る年波に、流行の変化に会わせてゆくのに苦労します。
娘は、流行に合わせて結婚が遅れて遅れて、しかし、ようやくバージンロードを父親と歩いてくれる事になりましたという団塊の世代も多いでしょう。
 ここでも、祝いの花束というよりは、祝いの携帯電話のフラッシュ攻め。カシャカシャカシャ!
ちょっと、厳かな重みを感じられないが、これも時代の流れ、まあいいか。
いかがでしょう?
膝送りの都合上、このところ出ずっぱりの感がある影左さまのお早い付けで恐縮です。
携帯電話の花盛りの世相を詠み込んでいただき今様の風俗が活きます。
恋の句になります。
昨今は、携帯を持たずんば人にあらず、といった塩梅ですね。
一度便利なものを手にしたら、前に戻るのは難しいですね。
携帯を持たないでいられる人は、周囲にけっこう迷惑を掛けているのでしょうね。
サスペンスものや刑事もので、ひと時代前の設定でシナリオを書くのは難しいかもしれません。
見る方がもどかしいシーンが出ないように工夫をしなくてはならないでしょう。
クールビズ、携帯と、今様の風俗を詠み込む句は、どうしても川柳風になりがちです。
しかし、ここが肝心なところでしょうが、今を生きている我々には、避けて通れないところです。
今様で、俳味を出すのが、俳句の存在意義であるわけですから。なかなか悩ましいところです。
多くの人が、風景俳句に、逃げている大きな要因がここにあります。
お次は、不易さまです。ご自分の花の座も控えております。恋もさらに濃厚に補完していただきたく、よろしくお願いします。

9,さらに濃厚にとの仰せなれど、すでに枯れ果てた身には中々に難かしゅうございます。農耕に勤しみつつ恋の俤でご無礼致しまする。
春の盛りはひと時の事、ながめせしまに早ももとせの姥。
「あらあら、綺麗なお嫁さん」と教会の前を通る叔母様たち
にも、さまざまな恋がおありだったことでせう。奥州の関を
越えゆく小町の述懐。 いかがでしょうか。
早速の付け恐縮です。第九句頂きます。
婚礼の花嫁の花のかんばせも、いずれはと妬みの心すさまじく、げに恐ろしきは・・・。
不易さまの心は既に陸奥へと誘われておられるご様子。
春へとめでたく季移りしていただきました。
謡曲卒塔婆小町には、
「昔は美しさに奢り、翡翠の髪飾りもたおやかに柳が春風になびくようであった。鴬のさえづるような声は露を含んだ糸萩の散り初めたよりも愛らしいとほめられたものだ。・・・・」と語る、 零落れた姿を人に見られるのを恥じて都を出ようとする老女は、桂川のほとりで朽ちた木に腰掛けて休む折、通りかけ卒塔婆に腰を下ろすのをとがめた僧に、老女は「出羽の郡司小野吉實の娘 小野小町」と名乗る。
やがて老小町は、九十九夜通いつめて倒れた深草少将の怨念に取り憑かれて狂い出す。御歳百歳だったそうな。
美人薄命ではなく美人長命だったんですね。
では、次は花前、山穂さまの番です。よろしくお願いします。

10,山穂さまから花前いただきました。
無常の峠越えに山寺の鐘の音がやわらかに流れて行く。
女の人生の儚さを遠寺の鐘が象徴しています。そこには朧に霞む春の気配も察せられ、華やぎも加味されて花前としての配慮もなされていて、山穂さま畢生の秀句です。花の座に遠慮して恋離れもなされています。季語は鐘朧で春。
さて、次は初折の花です。八句に花の文字が出ていますが、これは無論正花ではありません。
不易さまには思い入れたっぷりと桜の花を愛でていただきましょう。

11,いったい何がそうさせたのでしょう。
またまた剃髪、出家ものでご無礼いたします。
前句の遠景の寺から、塔頭の中に場を移してみました。
「髪剃って」は男性を思わせるので、静々と降る春雨にあわせ、ここは女人をイメージしましたです。
中七を「雨のこまかき」とも考えましたが、説明くさい気もします。いずれにしても打越気味が気になりますがいかがなものでしょう。思考回路、固まってしまっていて苦吟です。ご指導賜りますよう。
初折の花頂戴いたしました。そぼ降る雨に花散る日は髪のおろし時かも知れません。
前巻の「頭丸めて山門に入る」に続いての仏門シリーズです。
さて何があったのでしょう。

12,続いて折端です。剃髪したお相手は、毎度お馴染みの光景ですが、一同打ち揃ってのお詫びのニ ュースにご登場です。
世間に顔向けができない。もうイヤッ、という気持ちがそうさせたのですね。
どうもしめっぽい内容が続きます。
折立は、山穂さまです。裏入りです。明るくぱーっといきましょう。

13, 気候変動の折、皆さまお変わり無くお過ごしでいらっしゃいますでしょうか。宗匠さまをはじめ、皆さまには長きに渡り、パソコンが不通で大変なご面倒、ご迷惑をおかけ致しましたことを深くお詫び申し上げます。誠に申し訳ございませんでした。今後、このようなことが無いよう、十分気を付けてまいりますのでどうかお許し下さいませ。
それではお待たせいたしました。十三句目、まいります。いかがでしょうか。
うなだれて福を求めて来る人・そうでない人にも大声で売りつける。調子良く「福を
呼ぶよ」と大熊手を買わせては、実は自分の懐を一番膨らませているちゃっかり商人
の代表。
宗匠さまの仰る「明るくぱーっと」、変化を起こしておもしろくできましたでしょう
か。お目こぼしをお願い申し上げます。
PC復旧めでたしめでたしです。
十三句頂戴いたしました。
「今後二度とこのようなことは・・・」とお決まりの挨拶ですが、「これで何 度目?」と突っ込みたくなるような情景です。後でぺろりと舌をだす様子が透 けて見えます。酉の市の風景を穿った機微に満ちた句で滑稽味があって誠に結 構です。明るい転調が生きています。
では、お次は影左さまです。よろしくお願いいたします。

14, さて、山穂さんの軽妙な熊手売りの口上でこっちにも運が向いて来た。
せっかくの熊手をさっそく拝借、山に登って栗集め。熊手で掻き寄せればたちまち栗はかご一杯。
峠で、一休みしたところで収穫した栗の棘を剥いて味見を試みようとすると、おっと、飛び出した栗の実の奴め、峠の坂を右へ左ヘ転げてどこへ行く。
サラリーマン人生をやっとここまで昇って来たと一安心して、うっかり大切な物を
手元からこぼして見失う団塊の世代に忠告の一句。
まあ、そういう私が団塊世代。やっと手にした美味しい栗の実。邪魔な棘を剥きとって、
まるまる太った実をご馳走になろうとしたが、心の油断が失敗のもと。
そういえば、同年代の友人は、株の買い方のセミナーに行って来たぞと
鼻を鳴らしていましたっけ。
 最近,自戒の句が多くなりました。自分が信じられなくなってるんでしょうね。
いかがでしょう?
十四句頂きます。栗は大好物です。
栗の実ころころ、いずこに転がるか。人生どこへ転がるか分かりません。
団塊ならずとも気になるところです。棘も気になります。意味が深いですね。
秋が早くも出ました。四句を秋で繋ぐことになります。

15,秋もたけなわ、涼しさも増してきました。北からは紅葉の便りも届くようになりました。
風邪ひきも多くなる時節ですので、ご自愛を。
影左さまの栗イガに誘われての食欲を抑えて、十五句まいります。
峠で拾った大きな栗イガを剥いたら、何処に実があるのかというほど中身はちっぽけ。
楓の林の中では観楓会がたけなわ、ひときわ豪奢な一団が目に付く。都でも評判となったお大尽の遊興の様、しかし後で聞けば、借金のかたに中国渡りの名物の香炉を手放したとか、実体のほどは結構小さいのかも。
都では、秋の遊興といえば観楓会。狩野秀頼筆、国宝「高尾観楓図屏風」にその様子をとどめております。時節柄、東京国立博物館では国宝室に展示中です。
呆けのせいではと思われる不手際で長短取り違えて滞ってしまい申し訳ございませんでした。
では、十六句、不易さまよろしくお願いします。

16,続きです。「里芋焦がす鍋で代替え」としたのですが、山さまの月の前ですし、初折が他月でありましたので、月の出を妨げることのないよう幾らか控えおりましてございます。いかがなものでしょうか。
遊興の果ては香炉だけでは済みませんでした。家も家財もすっかり手放す事になったようです。 いったいどんなご道楽をされたのでしょう。今は人の住まない売り屋敷の塀に、秋風に吹かれた萩のひと株が侘しい音を奏でています。
人生いけなくなると、もう止まりません。坂道を栗が転がるようにどんどんい ってしまうようです。
十六句、月の出を待つばかりのしつらい誠に結構です。
煩わせて申し訳ありませんでした。
では、待たれます月の出です。山穂様よろしくお願い致します。

17,深まりゆく秋の日に、皆さま一層お心をとぎ澄まされていらっしゃるのではないでしょ
うか。
一昨日、夜空に光る三日月は、この世のものとは思えない美しさでした。また例の、お月さまとの会話を一人楽しんでしまいました。知らない人が見たら、気味悪いでことでしょうね。
それではお待たせいたしました。月の句です。いかがでしょうか。
今宵見事な満月。どうも今日のお月さまは寂しがりやのようで、寂しくも美しき萩の音に惹かれながらも、なにやら賑やかな人の集まる場所へ光りを放ち、褒め讃え、愛でてほしいご様子。さて、隣は何をする人ぞ。
宗匠さま、どうぞ深いお心でお通しくださいますよう、切にお願い申し上げます。
よんどころない所用で留守にしていまして返信遅れて済みませんでした。
月の句、頂きました。
なかなか難しい句です。お月様をお友達にしている山穂さまならではの句ですね。
隣人にもあまねくという広い心を持てば何ごとも受け入れることが出来ると言 うことでよろしいでしょうね。
遅れた手前恐縮ですが、先を急ぎましょう。
次は影左さまお願いいたします。裏の折端です。
4句連なりましたので秋は離れます。よろしくお願いいたします。

18, 春は桜の幹に抱きつき、秋は満月に向かって声高に語り合う超人間の振る舞いを日常とされる
山穂さまの後を詠ませて頂くのには、怖いものがありますが、また光栄でもあります。
 明るい光の存在の影には闇、闇のその中には、光りが包み込まれている。
この世は、そんな不思議な入れ子式の構成になっていて、山穂さまの鋭い感性のDNAには、人類誕生以前から宇宙をさまよっていた霊力を密かに受け継いで来たらしい神秘的なパワーを感じます。
 そんな霊力の勇躍する夏の夜の光景に引き寄せられて、十八句です。
 月夜の金色の光から、舞台は、暗闇の清流でぽつんと銀色の灯を清流に落とす
火振り漁へと変化します。
 眩しい火振りの明かりがおとりとも知らず、清流に生命を託して生きている
川魚たちが、背でその銀色の明かりを照り返して泳ぐ。
眩しい火振りを一瞬、反射する。川魚にとっては、生と死が隣り合わせの時間。
自然の営みと人間の営みが同居する夏の夜です。 
早速の十八句いただきます。
皓々とした月明かりから、絞った灯りが揺らめく暗黒の世界への転換が見事です。
絵画的なイメージを抱かせ、人の生をも垣間見せた秀句と言えます。
果物、栗の実に次ぐ影左さまの食材シリーズの一環かもしれませんが、
  おもしろうてやがて哀しき鵜舟かな  芭蕉
が思い起こされる哀感も盛られて、深みがございます。
では、いよいよ裏入り最終六句に入ります。
不易さまよろしゅう願いまする。

19,影左さまの折端の絵画的な映像美溢れる鋭い句に合わせられずに苦吟しました。宗匠さまご指摘の蕉翁の句のように華麗と哀愁を意識しましたが、出てくるのは前句に負けますものばかり。いっその事に、前句の美しい情景の想いをはなれて、付け運びを優先しての遣り句で展開を試みましたが、いかがでありましょうや。言い訳たらたらの胸中お察しあれ。
十九句謙遜されてますがどうして、脱力感といいますか気の逸らし方は一流の句でございます。

20,転換の妙句の後を受けまして、廿句は、
人が忙しく立ち回っている時に、そろそろ扇だ団扇だ、とのたまう御仁は、暇な人です。
暇な人は、そろそろあれが届く頃だなと、季節の到来物を首を長くして待っています。
廿一句は影左さま、今巻の最終句となります。よろしくお願いいたします。

21, 待ちわびる到来物が、何日何ヶ月経てもなかなかやって来てくれません。
そうこうしているうちに、自然の巡りは、正直なもの。到来物より先に待ちわびた春の訪れがやってくる。地面からは、下も消え、若草が芽生えて来た。
生まれたての春駒がいななきと共に、その牧草を蹴って駆け出してくる。
 若駒の生命力が、まるで春を呼び寄せているようだ。
すべての生き物にとって、春の訪れこそが自然が準備してくれた到来物なんでしょうね。
春の廿一句に変えてみました。
閑人が待ちわびるのは春の到来、命の芽吹きのひとコマへと移りました。
名残の裏らしい躍動感とうれしさに包まれた温かい秀句です。
これにて、影左さまは満願完了となり、高みの見物を決め込みます。
お疲れ様でした。

次は花前です。山穂さま最終句となります。よろしくお願いいたします。

22,お元気でお過ごしでしょうか。暖かな日が続いておりましたが、今夜あたりはカサカサと風に追われた枯れ葉の舞う音が聞こえてきます。明日は立冬、いよいよ私の苦手な寒さがやってまいります。
さてさて、影左さまの美しく素晴らしい句に気後れして苦吟しておりました。
大変お待たせいたしました。宗匠さま、いかがでしょうか。
待ちわびた春の訪れ。フィルムから流れるはしゃぐ子供の姿から、命の喜びと躍動感が伝わってきます。
駒と映像のひとコマで、えー、ホームビデオか噂のPod castでしょうか。申し訳ございません、こじつけてしまいました。宗匠さま、何卒よろしくお願い申し上げます。
花前いただきました。
前句と同場面と想像されますが、対象は人間となりました。
駒からコマへ、先行きの難題ビデオ問題を取り上げて牽制球を投げ入れた
様子の付けでしたが、無難に納まりました。
では、次は匂いの花です。暫時お待ちを願います。

23,匂いの花です。
子供たちの元気さには負けます。ほろ酔いでうとうとと、僅かの間に花片がいっぱい。静かな安寧の春の昼下がりの景でした。

さて、これにて、道成寺「花の他には松ばかりなり」ではありませんが、 
最後の挙句を待つばかりとなりました。
不易さまよしなに。ビシッと決めて下さりませ。

24,締めの句いかがでしようや。
酔い覚めと午睡の後の空腹感。花よりナンとか、でも家人はお留守。
誰も居ないので自分でやるしきゃない御仁。そろそろ旬も終わりの残ったサワラを温め直す。それでも、焼きあがったらまた、それと庭前の散る花を肴に飲み始めるんでしょうなぁ。何処ぞの宗匠さまのような?。
(注) 「チン」は自身で使用する場合はどこのメーカーに限らず「朕」の字を充てるのが常。因みに、たまに使う時は「珍」、人に借りて使用する場合は「賃」、本来の目的以外に使用する場合は「枕」。〔つい先日お亡くなりになられました、迂生の敬愛する先生の内のおひとりである漢字の神仙・白川静大先生の『字訓』には勿論載ってはおりません。為念
ビシッと、との仰せなれど、今巻は(今巻に限った事ではありませんが)いまひとつ”ビシッ”が足りませんでした。申し訳ありません。
最後くらいはと気張ってみたのですが、やはりお腹に力が入りません。
腹が減っての戦でご無礼致しました。サワラだけでなくご飯も食べて英気を養い、次巻ではご期待に応えるべく備えますです。
挙句頂戴いたしました。
ビシッ!ではなくチン!で締めくくられました。
無精だが几帳面な独り者像が浮かび上がってきます。
これにて目出度く終了いたしました。
お疲れ様でした。

白川静先生には白寿も百寿も長生きしてほしかったですね。
白川先生の「常用字解」なる小辞典を時々見ては、20ヘェーと驚いておりました。
ご冥福をお祈り致します。

野の人を大切にしてこなかった近代日本国は閉塞感に苛まれることになりましたね。
江戸は、そうでもなかったのに、なんででしょう。

通観してみまするに、本巻は、旅に出ていませんなー。
せいぜい奥州止まりでしょうか。
恋句も淡泊でした。
野にはじまり野に終わった一巻でした。
起伏に乏しいきらいがあったのは偏に捌きの力及ばずところと反省いたしております。
次巻での捲土重来を願って止みません。