連句表紙頁

自己解釈

評者 涛青

1、酔い覚めの水を飲みに降り立土間の隅の白葱の束。闇に浮かぶ葱の白さが冬の夜の寒気と暗さを際立たす。幽かに響く時雨の音が、夜の闇の一層の閑けさを際立たす。(易)
評--静かに沈む白と黒、フィルムノワールの世界を見るようで秀

2、時雨れる時の客を迎えるにもてなすのは暖。しかし焚くものとてなきあばら屋ではぜるは去年取り替えた柴垣。葱はすでに鍋に入れられているか。こちらでは音を出して客人に答えた。(青)

3、評 3句目は飛躍が求められるところだが、初出は「波を追う枯葉が語る旅の果て」だったが、「語る」は理に落ちるので改めた。「追う」は観念的なので「追い」として現に動いている様に転調して情景句にした。ひとひらと限定して孤影が深まったと思うがいかがか。て止めにしては苦しいが、この際おいて次に。(青)

4、.四句目は一巻中もっとも軽い句の位置。静かな句が続いたので、雑踏のざわめきを取り入れました。旅の果てに辿り着いた港は漁の最盛期。(易)

5、月の定座。港の市の喧騒も静まり、月が昇る。明かりで、最愛の人の不在を改めて感じ、寂しさをしみじみと噛み締める夜。(青)

6、評 「つきさして」がよくなかったのかしらん。なんか壮絶な気配が。まあ、山穂さんの日頃の言動から推すと、単に歯止めの利かない酒飲みの独白ととるべきでしょう。寂しさのあまり。次は裏入り。不易さん面白く願います。(青)

7、ここでの酒はビールかウッゾーがよろしい。夏の午後、午睡の前に喉を潤す。清水に晒した桶の中でお辞儀をする到来物の枇杷。物憂い夏の昼下がり。

【感想】裏入りでもありますので、転調と滑稽味をとも思ったのですが、前句に曳きづられるのも避けなければなりません。余り破調になるのもいかがなものかと。まあ、一句中で余り行為や所作を限定してしまわないほうが物語に広がりがでるようです。次句に対するこころ配りにもなりますしね。余意、余情ということでしょうかね。(易)

8、隣の目を気にしている小心者か。前句の到来物の枇杷といっしょになると、隣に知られたらこまるというしぶちんの人物像がうかぶ。逢い引きとも夜逃げの相談でも、後の句にはいかようにも付けられる気遣いの遣り句。(青)

9、人に見られて困るのはねずみ小僧か盗賊。盗みに入った商家には立派な雛壇が。なんでもお構いなしに盗み取ってしまう盗賊だが、里子に出した幼き娘を思い出し、鬼の目にも柔和な光が宿る。(山)
評 初出は、盗賊となっていたが、徒党を組んでの複数のイメージなので、盗人として、さらにおどろおどろしさを弱めた。

10、前句の人物は、万引きか、それとも盗品を捌きにバザーに参加したものか、かって押し入った時の盗人の述懐か、いかようにも。(易)

11、故国を逃れて春爛漫の桜に出会うが、一陣の風に舞い狂う桜花に、胸騒ぎ、バザールで賑わった故郷の往時のカンダハルを偲ぶ。
今日性を盛り込みつつ式目をはずさない手練の句(自賛)。神田の春ではないので、念のため。(春3句、次句は季離れを)(青)

12、切りすぎないでってあれほど頼んだのに。恥ずかしさに思わずスカーフを巻く。そう
いえば最近テレビで同じように布を巻いた外人女性を見るけどあれも切りすぎたのか
? 
評 アフガニスタンのブルカの女性映像からの発想か?

次句からは名残に入ります。青、易、山、の順に入れ替えます。(月は山さん15句目、花は易さん、挙句は山さんになります)。

13、真知子巻きの女性が追うのか、男が逢いに行くのか、とにかく急いで漕げよ、渡し舟のご老人。

14、船頭さん、あの渡る雁たちに負けないよう急いでね。「あげ」は音戸で「安芸」の洒落。「渡し」に掛けての「落雁」でいささか言葉付けでに過ぎるが、次の「月」への心配りのこころ付け。
評 時節は秋に転じたので、いよいよ次は月の座です。 

15、昔出て行ったきりの風来坊。無事の帰りを心待ちにしているが、寒寒とした月の光は行く末を暗示させる。
評 いろいろつくられましたがこれでいきましょう。

16、月夜に窓辺にご婦人とくればご存知「ロミオとジュリエット」なぜあなたの名は・・・と問われるような名前が無い身に侘しい秋風が。持てない男の物語。
評 秋三句とつらなり次句で景色を転じて。

17、雨宿りの人物。お遍路さんか、遍路を辿る売れない俳諧師か、それとも己の姿か。人物を見ている人か、ご当人かは次句へ。「氷雨」の季は夏・冬両用あり。「遍路」は春だが、「道」を付けて一年中。前句が秋で春夏秋冬。よって雑としました。

18、軒先の家の中。御接待をするため、お茶を立てているところ。茶釜から出る湯気の音さえ聞こえない静けさのなか、降り始めたやわらかな雪の音が聞こえて来るようだ。

19、当初、「鰯焼く」として、第4句に鰯が出ていたのを失念。「目刺し」に換えたが、秋から春への直の季移りがきついので、夏の「蚊遣」に変更した。豊かな方々には茶の湯の楽しみがあるが、てやんでいこちとらには、あけぴろげの夕涼みの楽しみがあらーな。

20、いつの世も庶民のバイタリティには感心させられます。
はなはだ宗匠さまにはお恐れ多い事ながら、四句目にて「鰯」を季語として用いております。愚案ではありますが、鰯がふたつで「めざし」としてはいかがでしょうか。
はたまた、「うるめ」「かたくち」、いっそ「さんま」と魚種を変えるのも一興かと。また「路地」はビジネスモデルとして登録ずみです。          易 平伏
評 独り占めは独禁法違反です。自由化の波は連句界にも及んでます。
残すは4句、次句は秋はつつしまれよ。

21、 待ちに待った夏の
祭典。鋒が近づき急ぐあまりあわてて片方の下駄がぬげてしまったあわて者。いかがでしょうか?
評 情景はいいですね。初案は「祇園会に急ぐ姿は片下駄で」でしたが、「急ぎ姿は」は直裁ですので、いい得て妙ぐらいの余情でよろしいかと、手直ししました。

22、前句では滑稽味が、これと合わさると祇園会で急いだのはわけありとなる。ほのかな恋句か。「梅」と「松(まつ)」とくれば次は桜に決まり。これほど花前にそぐう句はないであろう。 自賛

23、婚姻色になったウグイは別称、櫻石斑魚ともいいます。また春がきてウグイ売りがやって来たとも、ウグイ獲りをしている谷川は爛漫の春景色とも。
評 結構です。では挙句ですね。固唾を飲んで見守りましょう。

24、春の喜びに賑わい人あふれ、東風のいたず
らは行き交う人々の袖を揺らす。いかがでしょうか?
評 きれいにまとまりましたね。終わりよければ・・・・。これにて、今年巻頭の巻が終了しました。ご苦労様でした。