自己解釈
評者 不易
1、春はあけぼの・・・。何とも言えない気だるさ、脱力感、これが心にもいいのかもしれませんね。出だしは静かに始まりました。
2、野の帰り道、蓬を摘んで届けてくれたお客人に早速草餅を作ってもてなす様。
3、わずかな風に暖簾の先が少し揺らぐ。おや、春が来たのかな。前句のお客人は春も伴ってきたようです。
4、言うことはありません。ご想像におまかせします。
評 多少、「草餅」と「赤福」で打越ぎみなところもありますが、自家製と名物ということで、「伊勢」の地名に重点を置いたことにしましょう。語調は整っていて良。 不易
5、「行きつ戻りつ」から「ためらう=十六夜」としました。いざよう月の下、浜で行き交った人は遠き日に出逢った人だが面影も無く、直ぐには解らなかった。相手も我が身を思い出す様子も見えない。「伊勢の赤福」から「伊勢物語」の世界へ少しばかり。如何でしょうか?
評 古典に触れるのは佳き事です。お続けください。
「十六夜」は月を簡略化したものです。通常の場合、前にマンスの月など「月」の文字が出てしまっている場合は、月の字を使わずに、月の異名(桂男、兎、有明等)をもちいますが、この場合は月の定座で1〜4句には月の字はありません。このような位置ではなるべく素敵な月の字を詠むように。以後、お心がけくだされ。全体としては物語性もあり、なかなか佳。
6、「十六夜」日記とくれば、実子と継子の領地争いが発端。そこで株分け。「違える」は忌みを避ける「方違」に変換。そこで吉。春に株分けした萩はこの秋、どちらがみごとな花をつけたのか。十六夜の月の下での鑑賞会。
7,「萩を育てた自慢の庭に客人(近所のガーデニング愛好者?)を待つ主人。庭を掃き清め、後はコーヒーを入れるだけ...秋うららかな日に、何とも羨ましい時間です。」
評 情景描写に終始していますね。説明的にすぎますが、前句の解釈は
とてもよいと思います。まあ、長いブランクの後と言うことで、ここはテンポを優先させていただきます。付け速きことで勢いが出ます。名句も迷句もリメイクも生まれます。速やかにお運びくだされ。
8,静かに客を待っていたが、餅をつくる豆も挽いて、ちょっとだけといいつつ。句作りの遅いのをどうこうではないですよ。誤解無きよう。
9、来るわけありませんよ。そのお方なら、人山の露地でバナナの叩き売りだか、がまのあぶら売りだか、井戸端会議に引っかかっていたんだかなんだか。楽しそうに「あぶら」売ってましたから。宗匠殿に叱られるのを覚悟で使用させて頂きました。「路地」でなく「露地」なのでお許し頂けますでしょうか?
評 露地は前回、すでに規制緩和しましたので、さしつかえありませんです。
10、春は蜆が旬。庶民には手頃で美味しく、体にもよい。特に、瀬田の蜆は色艶もよく滋養の薬。裏町の庶民の暮らしぶり。雰囲気だけで続けさせて頂きました。
11、おもしろうてやがて悲しき鵜舟かな ばせお
のもじりですね。付けは、しいて言えば、殻の黒々と明るい桜との対比ですね。
12、ひとり娘の嫁入りも間近、一緒に花見が出来るのもこれが最後かもしれない...美しくなった娘は満開の桜の下でとても幸せそうに花見を楽しんでいる。
13、前が恋句仕立てですので、面影としての恋をつづけます。
14、漁師町の昼下がり。風鈴の音色はやさしくまどろみ誘い、時には目を覚ますくり返しがなんとも言えない心地良さ。これが夏の午後の日課。
評 風鈴の音は「チリン」と片仮名にするとガラスの質感が出るようにも思いますが、前句が古歌仕立てですので、これでもいいでしょう。「ちりりん」とせずに、「ちりん」としたところはよいです。夏の物憂い風の姿が感じられます。何より返しの速さがたいへんよろしい。
15、うたた寝のつもりがすっかり寝込んでしまったのか、空は満天星。銀河を駆けめぐる冒険の旅...
評 「天の川」で季は秋となります。
16、来年の今頃はどこで、この月をながめるのだろうか?漂泊の人ならではの感慨。
17、今年の月も良きものであった。名月の後、夜ごと月の出も遅くなり、宵闇も永くなってきた。そろそろこの地も去るとしょうか。一閃、闇を裂くような鹿威しの響きに、何やら精神の覚醒をも暗示させる。
18、久しぶりの我が家。迎えてくれた自家製の白菜漬けは目も覚めるような白さ。団らんの中での味は格別だ。前句の静けさに対して団らんの賑やかさで動を表現しました。
評 ちょっと喉につかえそうですが、季(気)を転じていただいた労を慮って由としませう。
19、いつも行き着く話は家を出たわが子への心配。一家団欒も昔のこと、夫婦ふたり の夜は津々と更けていきます。
評 「夜深し」は一部季寄せでは秋とするものもあるようですが、ここは深更ということで、夫婦の情感の表現に力点があるように思われますので雑で結構。
20、親元を離れて勉学に励む毎日。暖かい南風が、まるで母親の温かい励ましのように吹いている。
21、夏の風を感じて白絣に変えて町に出た。心なしか人の目が自分に注がれているようで恥ずかしさと嬉しさが混じり合う(最近はほとんど白絣を見かけなくなってしまいましたね)。如何でしょうか。恋の呼び出しになりますか?
評 いいえ、(恋の呼び出しに)なりません。呼び出しはもっと仄かに。
小生も若かりし頃、やたら数多の女人に言い寄られました。恋の押し売りは結構迷惑な場合もあるのですぞ。
22、水温む春の風物詩の大根洗い。どちらが大根か。花前は恋を嫌いますので、やんわりと恋の打ち消しを。
23、春大根を洗う人の後ろ姿が母に似てる...幼き頃、花びらの散り敷いた大きな桜の木の下で、ほのかな甘い香りに包まれて、母と一緒に花びらを連ねて首飾りをつくったことが想い出される。
24、一巻満了を言祝ぎ。