連句表紙頁

自己解釈

評者 山穂

金曜日は大変お疲れさまでした。
不易宗匠さまには、ご面倒を多々おかけいたしまして深く感謝を申し上げます。また、素敵なお店をご紹介いただきまして有り難うございました。思い出深い神保町の地で楽しい一時を過ごさせていただきました。さて、新たな巻の始まりにつきまして、皆さまのご使命を賜りまして宗匠の大役を務めさせて頂くこととなりました。未だ勉強不足・力不足で恥ずかしい限りではございますが、不易様のご指導、皆さまのお力をお借りしまして頑張って参りたい所存でございます。一巻完了まで、何卒よろしくお願い申し上げます。 山穂

1,とりあえずは迂生が発句との仰せにより、始めます。
魚も人も活きのいいのが一番。人はこれに加えて粋であればなほ由。季節の移りを感じとり、旬をおいしく頂けるのも生きていりゃこそのこと。この一巻、元気に生き活きと楽しく巻き上げましょう。いかがでせうか。◆一巻速めに満了し、いざ飯坂温泉(?)へ。
早速に発句をお送りいただきまして恐れ入ります。頂戴いたします。初夏の風が勢いよく下町を駆け抜けて行くような、大らかで生き活きとした情景が浮かびます。まさに今日のような気持ちの良い初夏の日を思わせますね。素晴らしい発句をいただきました。
それでは脇句を継がせていただきます。

2,初鰹とくれば、次にくる初夏の風物詩は青梅でしょう。町のあちらこちらの店先に顔を出し、甘酸っぱい良い香りが漂う。梅を漬ける時の、塩を手にまぶしてごろごろと転がす音がどこからともなく聴こえてくるよう。
皆さまよろしければ、第三句を涛青さま、よろしくお願い申し上げます。

3,新たな巻、お手数をおかけしますが、よろしくお願い致しまする。
では、おおせにしたがいまして3句目参ります。
台所で下女たちがおしゃべりしながらしている梅の漬け物つくりなどは、楽しそうではないか。下々の生活は活気があってうらやましいと、勝ち気なお姫様は思うのであります。長高くとの三句目振りにはふさしいでしょうか。ご差配よろしく願います。
ご丁寧にご挨拶をいただきまして恐縮でございます。一巻満了までどうぞお手柔らかにお願い申し上げます。さてさて、3句目を早々にお送りいただきまして有り難うございました。頂戴いたします。長高く転調していただきまして、お心遣いに感謝を申し上げます。勝ち気な姫様のお目が、キッ!と鋭く光る光景が見えるような・・・。女の戦いが始まるのでしょうか。なにやら面白い展開になってまいりましたね。この後が楽しみです。
それでは影左さま、大変お待たせいたしました。四句目をお続けくださいませ。軽やかに、さらりとお付けくださいますよう、よろしくお願い申し上げます。

4,大変失礼いたしました。初心者運転の前方不注意にございます。今回の巻の、いつにも増してあざやかな滑り出しに見とれておりまして前三句受け止める重さにうろたえて、早くも月の座が控える先が見えていませんでした。
それでは、秋。ちょと前句に付き過ぎが気になりますがいかがでしょうか?
影左さまには早々にお送りいただいておりましたのに、お返事遅くなりまして誠に申し訳ございません。大変ご面倒をおかけいたしました。四句目、頂戴いたしました。なんとも美しい情景が広がりましたね。前句とのつながりも良いと思います。とても素敵な句姿となりました。お月さまも出やすくなり、お心遣いに感謝を申し上げます。それでは月の句を続けさせていただきます。

5,美しい音色に誘われるまま行くと、見事な月が皓々と行く先を照らしてくれる。足下を照らしてはくれるが、酒飲みのおぼつかない歩きにはなんの役にも立たないようで。前句の美しさを壊してしまいましたでしょうか。ご勘弁くださいませ。
不易さま、大変お待たせいたしました。
六句目をお続けくださいませ。よろしくお願い申し上げます。

6,丁子頭は灯心のもえさしに出来た塊のことで、丁子の実に似ているのでこの名があります。灯火と月を受けての見立てで、寒さが少し身に染む時候にしましたが、いかがでせうか。
昨日、今日は梅雨寒と言ったところでしょうか。気温の変化は少々辛いですが、しとしとと降る雨音はやさしく、美しいものですね。不易さま、早々にお送りいただきましてありがとうございました。頂戴いたします。前句が頼りない句でしたのに、美しくさらりとお付けいただきましてありがとうございます。晩秋の冷気がしみじみと伝わってくるようです。お心遣いに感謝を申し上げます。
それではここからは初折りの裏に入ります。影左さま、お次をよろしくお願い申し上げます。秋からは離れ、変化をつけていただけましたら幸いでございます。

7,それでは、変化してゆきたいと思います。時の移ろい、季節の変化は、自然界の生き物と人間どもの共生リズムが変わる時期でもあります。
渚の生き物たちは、昨日までは、嵐とか日照りだけを気にして生きてきましたが、海開きの日は、海辺はドッと人間の脚で蹴散らされる運命の日。辺りは人間の歓声が覆い尽くします。大慌てで貝も蟹も砂地に潜って避難。
七句目、いただきました。泡吹く蟹、砂の家は現代の人間社会のようですね。一変して静寂から躍動へと波調を興していただき、流れに弾みをつけていただきました。有り難うございました。ひとつ、前句の「吹く」という語句が重なります。意味は違っても前句の語句とは重ならないよう、ご留意頂ければと存じます。

8,泡吹いて逃げ出してきた、海開きもままならない、ふる里の三宅島を洋上はるかに偲ぶ。おのれの家は砂の家のようにもろくもくずれてしまったか。こんなところですが。おめこぼしを。

9,

10,まずは不易さま、心からお見舞い申し上げます。いろいろとご不便がおありでしょうが、どうぞお大事になさってください。
不易さまの復活により、初鰹の巻を再開する運びとなりました。嬉しいかぎりです。大変な状況のなかでこのような力強い句をお作りになられるとは、さすがはお師匠さま、感動いたしました。それでは皆さま、不易さまの早期のご回復をお祈りしつつ、また、ご一緒にリハビリを頑張るつもりで句作りを進めてまいりましょう。あらためましてよろしくお願い申し上げます。不易さまの九句目をいただきまして、次は花前、私の番ですね。
焦がれた故郷の野原で存分に遊ぶ。袂に摘んだ若草は喜びの束となってふくらむのです。皆さま、いかがでしょうか。 

11.どうもうまくいきませんが、滞るのもいかがかと、とりあへずの花の句です。
草を摘む童らの夢は花の散るように儚くなっていったのでしょうか。
どうも、連句らしくない句になってしまいました。

12,えー、またしても反省を込めまして
広々とした田の真ん中あたり温んだ水に浸っておりました蛙が気付け薬代わりにエイヤッと餌を獲らんとする。まだまだ、緊張感にかける気分ですが、いかがでしょう?
元気な蝉の声が聴こえてくるようになりました。梅雨明けも間近のようですね。この先うだるような暑い日々が待っていますが、皆さま、蝉に負けずに元気にまいりましょう。影左さま、幾度もご苦労さまでした。十二句をいただきました。春爛漫の花の後、春の長閑な情景が面白おかしく表現されていますね。それでは、お待たせいたしました。続きは私の番ですね。季移りでまだ出ていない冬にしました。

13,腹を空かしても何もなし。食べ損ね、こんな寒い風の吹く日はもうやけのやんぱち、
街角で一杯飲むしかないでしょう。

14,出稼ぎの人たちのしばしの憩い。――この暑い最中に木枯らしとは、まさに俳諧の楽しみ。感服。引続きよろしくお願い致します。
有り難く頂戴したいと思います。不易さまお得意のユニークな句姿がなんともよろしいですね。愉快な情景が浮かんできます。一日も早くこのような雰囲気のなかで、ご一緒に美酒をいただきたいものです。

15,思い出したように訪れる台風一過の澄み渡った秋空の下わっしょいわっしょい、興ずるままに子ども神輿はどこまで行ってしまったのやら・・・。故里も楽しきことも郷愁のかなたに霞みがちな日々です。
災害をもたらす台風も子供心には、天が演ずるマジックのように感動していた時代が懐かしい思いです。
影左さま、早々にお送りいただきまして恐れ入ります。十五句をいただきました。清々しさと郷愁感が漂います。誰しもが持つ、胸の奥にあるにちょっぴり切ない気持ちを呼び起こす情景ですね。

16,元気な子供らの姿に重ね、失った子の歳を指折り数える、親の悲しみはつのる風の盆です。

17,風の盆を控えての練習風景。胡弓と月を弦で結んでみました。由なに願い上げます。
不易さまにはリハビリでお疲れのところ、早々にお送りいただきまして誠に恐れ入ります。胡弓と月を弦で結ぶなど、うーん、さすが、素晴らしいですね。前句からの流れを巧く、さらに美しい情景に広げていただきました。

18,月の流した涙が滴となって美しい真珠になったのだとか。すれ違ったその人の真珠の首飾りは、美しい下弦月のような曲線を思わせ白露のように輝いていた。

19,波頭に光る白露は、うなじに光る白玉のよう。真珠の首飾りのかの人はあれからどうなったか。物思う小島の磯にひとり佇めば、海鳥が一羽。おまえも昔の浮きことを思っているのかい。
恋の呼び出しにうまく対応できませなんだ。お次に、お贈りいたしませう。

20,皆様もめざましい快調さで、不易さまも入院生活の雰囲気さえも感じられず、進行するさまは不勉強の我が身に於きましては人ごとのように感激いたします。その快調さには及びませんが、見事な進行を崩すことも許されないこの流れを如何せんの気概で臨みます。
上方歌舞伎の名跡坂田藤十郎の襲名が231年ぶりとか。今頃はセレブ婚だの何だのが世間を賑わす時代にしっとりと現れた和事の世界。いつも力み過ぎましての失敗を積み重ねていますが、いかがでしょう。
夏の午後のひと時、いかがお過ごしでしょうか。影左さま、早々にお付けいただきまして、お心遣いに深く感謝を申し上げます。
二十句については雑となっておりますが、夕霧は秋の季語となりますので、ここは秋に直してそのまま頂戴したいと思います。「夕霧」だけを見ますと、一句挟んで秋に戻り前々句の「露」と同様、多少打越気味で気になります。が、藤十郎=夕霧、霧=帳=垂れ幕と連想させる技巧・演出は素晴らしいと思います。影左さまの独自な世界が表現されていますね。このまま続けたいと思います。お次は私目、今巻最後のお役目となりますが、皆さま最後まで引き続きよろしくお願い申し上げます。

21,襲名前のご贔屓筋への挨拶まわりか、もしくは襲名披露の顔見せ興行か、はたまた芝居帰りのご一行か、町屋辺りは祝賀ムードで賑わいを見せている。花前に差し障らないと良いのですが。いかがでしょうか。

22,京のやすらい祭は花の祭り、春を告げる虫送りの行事。いかがでしょうか。
不易さまより花前の句をいただきました。とても素敵な花の呼び出しとなりましたね。この先、美しい花が溢れ咲き誇ることでしょう。

23,京の春の訪れを喜ぶ子等もすくすくと成長します。進学に就職に全国各地に散って新しい人生を切り開いてゆく。
幸い日本列島どこへ行っても花見が可能。東京でも弘前でも新しい仲間と集えば、飲酒解禁の二十歳を越えて乙女達も花咲く頃となり
満開の下、食べて飲んで歌って元気印の乙女たちは、散る花の美しさを知ってか知らずかほろ酔い気分。
夢か現か年に一度の花見のひとときです。

24,世は浮かれて、皆でかけるが、じっと動かず大人の趣もよきものでは。いかがでしょうや。ジャバザハットのようでもあります。

講評
一座の皆さま

昨夜の満月は夏の夜空に見事に光り輝いておりました。
お月さまに見とれているうちに、あっと言う間に花の句・挙句と続けて素晴らしい句をお届けいただきました。影左さま、涛青さま、ありがとうございました。
さて、皆さまの多大なお力をいただきまして、本日無事に初鰹の巻、満了の運びとなりました。皆さまには心から御礼を申し上げます。
半ば、不易さまの大変なお怪我で心痛みましたが、不易さまは不屈の精神で乗り切られました。改めて敬意を表したいと思います。
涛青さま、影左さまには力不足な点を多々支えていただき、また、数々の新たなお教えをいただきまして深く感謝を申し上げます。
私もこの機会を得て少しだけ何かが備わったような・・、思い違いでしょうか。
不易さまの早期のご回復と、皆々さまのご健勝をお祈りしつつ、近い日にまたお目にかかれることを心待ちにしております。

初鰹の巻の宗匠・山穂