星座と神話

牡牛座とすばる
Taurus&Preades

<スバルを擁した星座>
冬の夜空に君臨するオリオンに、角振りかざして突っかかる真っ赤な目をした牛の姿ですが、この星座を有名にしているのは、牡牛の肩のあたりに位置する星団のせいかも知れません。
眼にあたる赤い星は、一等星アルデバランで、直径で太陽の50倍ちかい巨星です。

<牛の伝説>
ギリシア神話でこの牡牛にまつわるお話は、2つあります。いずれもゼウスさんがちょっかい出したお話です。
<エウロパの話>
フェニキアの王女・エウロパは、ある日浜辺で侍女たちと休んでいると、どこからか優美な白い牡牛が近づいて来ました。エウロパにすり寄り、背中に乗れというような仕草をしたので、気を許して乗ると、そのままスタコラサッサと海に入って、アレよアレよと言う間もなく陸から遠ざかってしまいました。牛曰く「わしはゼウスで、そちを花嫁にするのだぞヨ」、と勝手なことを言って、着いたのはクレタ島。生まれた子供の一人は、ミノス王となってクレタの支配者となった。エウロパの名は、ヨーロッパの語源とされています。
<悲しいイオの話>
これもゼウスの播いた種。河の神イーナコスの娘イオをゼウスが見初めて、いい仲になったところを、正妻ヘラに感づかれて、慌てたゼウスは、イオを牛に変えてしまいます。それからは、嫉妬深い正妻ヘラは、牛になったイオに数々の嫌がらせを仕掛けます。そのひとつ、強力なアブを送って牛を刺させて追い回させて、悲しいかな逃げまどうイオ。それを哀れんで星にしたという話ですが、これだと、雌牛座としなければ話があいませんね。

<プレアデス星団---すばる>
青白い星が6個か7個、ひとかたまりになって輝いているのは冬の夜空の風物詩といえます。古来から日本では昴、すばると呼び習わされてきたものです。
ひとつはちょっと小さく見えるのですが、眼のいい人は7つの星が見えます。
実際は、数百個の恒星が適度な距離をおいて集まった散開星団で、皆青白い強烈な明るさを持った若い星の集まりです。天空では比較的太陽系に近く、ほどよい集合体に見える位置にあるわけです。双眼鏡で見てもかなりの数の星が見えるそうです。機会があったらぜひトライしてみましょう。

<ギリシア神話 七人姉妹プレアデス>
天空を支える巨人アトラスには、七人の娘がいた。プレイオネーとの間に生まれた娘たちで、そのなかの一人エレクトラーは、トロイア王家の祖先となるダルダノスを生み、トロイの滅亡に涙して、ひとつの星だけが霞んで見えるという理由とされた。
プレアデスは、オリオンに言い寄られて、追われているのだという。すばるを追ってオリオン座が上がってくることによるのであろう。

<なれの果てのカニ星雲M1>
この星座には、もうひとつの見物があります。下側(牛の右側)の角の先端近くにぼんやりみえるものがあります(船の上からは無理ですが、双眼鏡を固定してじっと眺めると)。ガスが猛スピード拡散していて、カニのような形にみえるところからこの名が付きました。
この星雲は、1054年に爆発した超新星のなれの果てです。当時の人の記録からこの現象が裏付けられました。日本では、鎌倉時代の歌人・藤原定家の日記「明月記」には、天喜2年(1054年)4月、牡牛座のここに木星とおなじ大きさの星が出現したと記されています。7200光年のかなたの星ですから、とてつもない大爆発だったことになります。そのすごさは、もしこの星が太陽系にもっと近い巨星アルデバランと同じ位置にあったとしたら、地球では、太陽が2つ見えるようなものだといわれています。


図 Bayer Uranometria 1732 ed.