アマチュア無線によるクルージングボートサポートシステムについて
( Maritime mobile safety network )

  本間 記 2006.march  JH2UZB/7 
 国内や特に太平洋方面などを航行するセーリングボートなどにとっては極めて有効と思えるセフティーネットワークとしてのアマチュア無線によるサポートシステムがあります。
 それは、アマチュア無線のHF帯の電波を使用するネットワークの存在です。これは太平洋岸を中心としてヨットの航海に興味を持つアマチュア無線家、例えば海上の本船乗員や航空関係の方々で航法にともなう気象や通信の専門家、また太平洋の島々に住む人々、港やマリーナ関係者などを含む多くの海上や陸上ハムと、クルージングやレースをする多くのヨットやボートマンハムたち(海上移動局=メリタイムモービル局=MM局)の間で、現在地、気象、健康、航海情況等を定時に交信し確認しあうものです。

 これらのネットワークを支えているコントローラーやサポートするハムの方々は、アマチュア無線ゆえの無償の行為であることに間違いありませんが、この何十年にもわたる毎日のネット運営と維持継続には頭が下がるものです。もちろん電波法に基づく免許や運用法を遵守したものですが、最近、国内外へ長距離クルージングにでかけられるセーラーが多くなったことや、無線機やアンテナシステムの技術の向上と共に以前より艇体へのセッティングが容易になったことなど、比較的身近にアマチュア無線の海上移動局を開局できることもあり、機器を搭載しネットにチェックインするセーラーが増えています。

 セーラーにも多くのハムがいます。通常144や430メガヘルツのVHFやUHFを多く使用しているようですが、HF帯にはスケールの大きな世界があります。HF帯の無線機があれば太平洋を行くセールボートとの交信をワッチして見るのも参考になるとおもいます。特に将来ロングクルージングを計画しておられればさらに興味あるものでしょう。

 世界には“SEA”ネットなど、各水域に同じようなアマチュア無線によるMMサポートネットワークが多くありますが、海外や日本国内からもチェックイン可能で日本から運用されているMMセフティーネットを紹介します。法的に遵守されている局であればチェックインする事は可能ですが、ネットは限られた時間の中で運用していますので節度ある交信を心がけなければなりません、そしてその運用背景を充分理解して参加する事が必要です。初めての方におかれては、しばらくのあいだ交信のやり方を聞くことをお薦めします。何日かワッチすればそのコツが判るはずです。

 クルージングセーラーやヨット好きの多くの陸上ハムと知り会えることにより、ご自分が航海をする立場になったとき、心強い良きサポーターとして協力して戴けるでしょう。たとえばアンテナやリグの技術的セッティング方法などの相談や台風の情報、国内、海外も含む入港情報、家族への状況報告など多くの支援を受けた方々もおられます。しかし初めてこのようなネットに声を出すのは誰でも躊躇するものです。現在チェックインされている多くの方も最初は同じと思います。交信の要領が解ったなら、どうぞ気軽にマイクを握ってみて下さい。声を出せば電波と共にそこからたくさんの仲間との友好の輪が広がるでしょう。

日本から運用しているMaritime mobile safety network を紹介します。

1. シーガルネット 周波数 21.382メガヘルツ USB スタート時間毎日
     JST7:00より  NC JH8FKO 西村さん 北海道札幌より

2. オケラネット 周波数 21.437メガヘルツ USB スタート時間毎日
     JST 12:20より  NC JD1BBH 山田さん 小笠原父島より

 各ネットには交信(QSO)を整理するキー局のネットコントローラー(NC)がいます。コントローラーの指示で運用されています。各ネットの運用方法は各NCの素晴らしい個性により各々雰囲気がちがいますが、おおよそ次ぎの通りです。

約30ー40分前後運用されています。最初海上局からチェックインして陸上局に行くのが通常です。多くの局がおりますので必ずゼロイン(キー局に完全に合わせる)させて下さい。緊急や急ぎの局は早期にチェックインを受け付けます。
コールサインとボートネームまたオペレータネームは基本ですので明確に告げて下さい。相手が了解できないような時はリピート(繰り返し)をし、フォネティックコード(朝日のアや、Aアルファー等)を使って確認し合います。
NCがスキップゾーンなどで(電波の伝播状態)チェックインする全ての局を確認できない時は、数局のアシスタントNCにより交信を確認します。QSP(中継)によるリレー交信となります。時には海外局にアシストをお願いすることもあります。


 通常電波の伝播状態がNCより見てよい時はビームアンテナを回転させながら、おおよそ南方面、九州、四国、関西、関東、東北、北海道のエリアの順でチェックインを受け付けてゆきます。
交信の基本的内容はシグナルレポート、天気、気温、風向風力、湿度、気圧、連絡事項、時節の状況が主なものですがMM局は現在位置(QTH)、進路、艇速、目的地とその残航を告げています。ただその時々の状況で一部項目をはぶく事もあります。
 特に海外にクルーズするMM局は、特定のサポート局(懇意にしているHAM等)がフォローしていることが多く個々のスケジュールタイムを組んでおられるようですが、各ネットにも気軽にチェックインしてきます。ネット側も事前に連絡を受け優先的に交信をしていただいている様です。
 また万一MM局にトラブル等が発生したらサポート局やリレーできる局とNCを中心に交信し、その他チェックインする全局はスタンバイ(待機)するのが通常です。
 途中で特定の局と交信したい場合はNCを通じて声を掛け、ネット周波数は避けて
 5ー10KC前後の指定周波数を指示しその周波数にQSY(移動)して相手と交信しています。
 ネットが終了する頃、各局間の横の連絡をどうぞとのアナウスもされますので簡単な連絡があればここで話します。最後にNCがファイナルコールを行ないネットはクローズされます。もちろんクローズ後の交信はその周波数上でも各局自由です。
 またMMでチェックインしていた局で航海が一区切りついて港で休息のため暫く離れるような時、もしくは航海が終了した時はネットに告げているようです。
 HFですのでいつも使用周波数帯の電波伝播の状態(コンデション)が完璧とはいえませんので、情況が悪いときにはネットは早めに終わる場合もあります。
 これらのようにネット運用はそれほど複雑なものではありませんので是非トライしてみては如何でしょうか。
 
 最近はインターネットのホームページを開設し、航海日誌を開示しているクルージングセーラーも多くおられます。それを読みながら同時にその体験を共有できることは素晴らしい時代となりました。しかし陸上局や国内クルーズのセーラー等も含め海外局や南太平洋上のセーラーなど多くの人がお互いの声で同時刻に電波で互いを確認しあうことは正にこれらのネットワークがメリタイムモービルセフティーネット(海上移動局の安全通信網)と呼ばれる由縁でもあると思えます。
 そしてHAMであることゆえの無線運用は海をゆく人とそれを支援する人の強い意志と連帯感とともにお互いを思い案じる人としての心がおおくの新たな人間交流を生み出して、日頃の携帯電話とはちがうフレンドリーなコミュニケーションや、電波と云う媒体によるダイナミックな世界の素晴らしさをこれらのネットから知って戴けると思います。

Have a nice sailing everyone, and I hope to see you at the MM network.

73’s DE JH2UZB/7  SUMITAKA.HONMA From Akita


参考

オケラネットについて
HYPERLINK  http://www.okeranet.com

世界のアマチュア無線などのMMネットワークについて
HYPERLINK  http://www.cruiser.co.za/radionet.asp

世界の海のクルージングボートポジションについて
HYPERLINK  http://www.pangolin.co.nz/yotreps/cruiser_plot.php

世界のアマチュア無線局約125万局のいわば電話帳について
HYPERLINK  http://www.qrz.com